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貿易大国であり、輸出大国のドイツ
日本の低迷とドイツの成長を、図表1にある輸出と輸入の観点で比べてみよう。
注目したいのは、ドイツの輸出の多さと伸び率の高さである。ドイツは「日本の3分の2サイズの国」でありながら、日本の2.37倍(2023年)の輸出がある。ドイツの輸出の伸びは、1995年から2023年の間に3.25倍となっており、日本は同期間に1.62倍である。輸出の伸び率はドイツの方が圧倒的に大きい。
2023年の貿易総額(輸出+輸入)で見れば、ドイツの3兆1700億ドルは、中国、アメリカに次ぐ世界第3位の数字であり、世界第5位の日本は1兆5030億ドルにすぎない。比較すると、ドイツは日本の2.1倍ある。また、名目GDPに占める輸出の比率(2023年)を見ても、日本は17%であるのに対し、ドイツは38%である。
つまり、ドイツは「貿易大国」であると言ってよい。そうした貿易を可能にしているのが、世界に冠たるドイツの「ものづくり」なのである。
かつて、日本は「加工貿易の国」と言われた時代があった。外国から原材料を輸入し、加工し、外国に輸出して外貨を稼ぐことにより、日本国民が生活していることを象徴的に表現した言葉である。
だが、時代が経つにしたがって、日本からの輸出はさほど伸びず、ついに貿易収支はマイナスになった。逆に増えたのが、海外生産によって得た利益である。海外で得た利益の一部を海外で再投資し、一部を日本の本社に送金する。こうして得た利益を、日本国内で付加価値を創出する投資に回さず、雇用も生み出さなかった。
そうして日本企業の内部留保、正確には利益余剰金が2023年度末に600兆9857億円となった。そこに、株高、ゼロ金利、円安などが重なり、一部の企業、一部の個人にのみ、お金が溜まるという現象となって現れた。
国内生産にではなく、海外投資に力を入れた日本
次に図表2の貿易収支(輸出輸入)と経常収支を見てみよう。ここに日本とドイツの産業構造・産業組織の違いが典型的に表れている。日本は、かつてものづくりの国ではあったが、じつはドイツほどに強力かつ大々的に輸出する力量はなかったのである。そのことを、かつてプラスだった日本の貿易収支が、大幅にマイナスになっていることが表している。逆に、ドイツは貿易収支のプラスを大幅に拡大させている。
逆に増えたのが、経常収支の黒字である。巨額の貿易赤字を補ってなお余りあるほど、海外投資によって得た利益を国内に送金する金額が増えたのだ。日本の企業は、海外に投資し、稼いだ金を日本の本社に送金する体質に変わっていった。
その反対に国内では投資を抑え、人件費を抑えるという構造に変化した。それでは国内に雇用は生まれず、賃金も上がらないし、再投資も行われない。国内消費は冷え、GDPは増えない。GDPの主要構成要因のうち「国内消費」「投資」「貿易収支」の3要素が失速したのである。
1社だけなら「利潤最大化」という経済学上適切な行動かもしれないが、それを多くの企業が同時に行ったため「合成の誤謬(ごびゅう)」が発生し、日本国内は、「デフレスパイラル」に陥った。
一方、ドイツは輸出を継続的に増やし、貿易によって大きな額を稼いできた。貿易収支の急増ぶりがそれを物語っている。経常収支の黒字額も増えているが、ドイツの強さは輸出によって得られたものと言っていいだろう。
国内に投資して、できた製品を輸出に回すと、国内に雇用が生まれ、賃金が増え、国内消費を拡大させ、それがGDPの増加へとつながっていく。いわゆる「プラスの連鎖」であり、これが通常の健全な経済成長のパターンである。


