“団地暮らし”という選択が守った老後資金
持ち家を買わず、長年賃貸の団地に住み続けてきたことも、資産形成には大きく影響しました。
「マンションを買おうと思ったこともあったけど、ローンが嫌でやめました。団地は家賃も管理費も安いし、近所づきあいも気楽。お金を貯めたいなら、ここで十分だと思った」
実際、佐伯さんの月の生活費は7万円ほど。年金だけでも黒字が出るため、貯蓄を切り崩す必要もありません。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2024年)』によると、70代単身世帯の貯蓄額は平均1,634万円、中央値475万円。
この平均値を押し上げているのは、まさに佐伯さんのように、堅実な暮らしの中で静かに資産を築いてきた人たちかもしれません。目立つことなく倹約を重ね、住まいに贅を求めず、年金で暮らしながら着実に“もしも”に備えてきた高齢者たちの存在が、統計の背後に見え隠れします。
「一人で生きるには、たしかにお金は大事。でも、今は“使う勇気”がないんですよね。病気になったらどうしよう、って」
娘夫婦は「今からでも楽しんで」と声をかけているものの、節約生活をやめる気配はありません。
「もうクセになってしまっていて。特売を探すのが日課であり、趣味なんです」
豊かな資産を持ちながらも、「贅沢をしない」ことに安心感を抱く――。そんな“団地の資産家”は、今日もチラシを片手にスーパーへ向かうのでした。
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