基礎控除が段階的に拡大…低所得層を中心に減税効果
これまで一律48万円であった基礎控除額は、2025年分から所得に応じて段階的に引き上げられる。具体的には、以下のように「合計所得金額」に応じて控除額が設定される(令和7・8年分の時限措置)(図表1)。
(注)1.改正後の所得税法第86条の規定による基礎控除額58万円に、改正後の租税特別措置法第41条の16の2の規定による加算額を加算した額となります。
2.58万円にそれぞれ37万円、30万円、10万円、5万円を加算した金額となります。なお、この加算は、居住者についてのみ適用があります。
3.特定支出控除や所得金額調整控除の適用がある場合には、表の金額とは異なります。
4.合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません。
低所得層の税負担を軽減する一方で、高所得層(合計所得金額2,400万円超)については、現行と同様に控除が段階的に縮小し、2,500万円超でゼロとなる。
本改正により、年収200万円前後の層では所得税の負担が実質的に軽減される見込みである。所得分布に応じた負担調整の色合いが強い。
給与所得控除の最低額を10万円引上げ、「年収の壁」対策の一環
給与所得控除の最低額は、従来の55万円から65万円に引き上げられる。これはパートタイマーや短時間勤務者の「年収の壁」問題への対応策の1つとされている(図表2)。
(注)給与の収入金額190万円超の場合の給与所得控除額に改正はありません。
たとえば、年収100万円のパート労働者の場合、給与所得控除65万円+基礎控除95万円=計160万円が控除されるため、所得税が発生しないケースが多くなる。非課税となるラインが広がることで、短時間労働者の就労抑制を緩和する効果が期待される。
ただし、社会保険上の壁(106万円・130万円)については別制度であり、所得税非課税=扶養内とは限らない点に留意が必要である。
「特定親族特別控除」の新設
2025年分から新たに「特定親族特別控除」が創設される。
対象は、19歳以上23歳未満の扶養親族(いわゆる大学生世代)で、所得要件を満たす場合に段階的な控除が適用される(図表3)。
学生のアルバイト収入が一定程度増えても、親の扶養から外れにくくなる仕組みである。これにより、「103万円の壁」による就労抑制の緩和と若年層の労働参加促進が狙われている。
扶養控除・配偶者控除の所得要件を緩和
基礎控除や給与所得控除の見直しに合わせて、扶養親族や配偶者に関連する所得要件も引き上げられる(図表4)。
(注)1.合計所得金額(ひとり親の生計を一にする子については総所得金額等の合計額)の要件をいいます。
2.特定支出控除の適用がある場合には、表の金額とは異なります。
これにより、パート・アルバイト収入が一定程度増えても扶養から外れるリスクが低下する。特に共働き世帯や子育て世帯において、柔軟な就労が可能となる点は大きい。
企業側の実務対応…「新様式」への早期対応がカギ
今回の改正により、年末調整関連書類の様式も変更される。新たに「特定親族特別控除申告書」が加わるほか、「基礎控除申告書」の記載欄も改訂される予定だ。企業の人事・経理部門は、以下の実務対応を求められる。
●年末調整ソフト・給与システムのアップデート確認
新控除項目・金額区分が正しく反映されているかを早めに確認。
●従業員への周知と記入サポート
特定親族特別控除や扶養要件の改正を説明した資料を配布。
●書類提出スケジュールの前倒し
例年よりも新様式対応に時間を要する可能性がある。
◆政府の狙いは「就労促進」と「可処分所得の底上げ」
今回の一連の改正は、単なる税負担軽減にとどまらず、「年収の壁」問題を緩和し、就労参加率を高める狙いがある。低・中所得層の可処分所得を押し上げることで、内需拡大や個人消費の底上げを図る政策的意図が読み取れる。
もっとも、社会保険制度上の壁(106万円・130万円)は残されており、税制改正のみで働き方改革が完結するわけではない。
政府としては、今後も税・社会保険双方の制度調整を継続していく構えである。
◆実務担当者は「前年踏襲NG」
2025年分の年末調整は、控除額の多段階化や新設控除の登場により手続が複雑化する。前年同様の運用では誤りが発生する可能性が高く、とくに中小企業ではシステム設定や書類チェック体制の見直しが急務である。
国税庁は特設ページで新様式の記入例や留意点を公表している。年末の繁忙期を見据え、早期の確認と準備が求められる。
〈出典〉
国税庁「令和7年分 年末調整のしかた」
財務省「令和7年度税制改正の大綱」
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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