お金は“使うためにある”が…「住まい」「相続」への不安
もう一つの不安は「住まい」に関する支出でした。築30年以上の戸建てでは、水回りや外壁の修繕など、大きな出費が突発的に発生します。
「去年、給湯器が壊れて30万円以上かかりました。今年は外壁塗装を勧められています。確かに必要なことなんですが、“これが続いたらどうしよう”と考えると、やっぱり使えなくなってしまう」
さらに、西川夫妻は「相続」についても不安を感じています。
「遺言書はまだ作っていませんし、実家の土地の名義も父のまま。いつか自分たちも“相続トラブル”に巻き込まれるかもしれないと思うと、専門家に相談しておいたほうがいいのかなとも…」
老後資金として4,000万円あっても、想定外の支出への不安、そして長年染みついた「節約癖」が支出を妨げ、生活の満足度が下がってしまう――。西川さんはそう語ります。
「結局、お金って“いつか使うため”にあるんですよね。でも、使う勇気が持てなかった。少しずつでも、自分たちのために使っていく努力が必要なのかな、って最近は思うようになりました」
老後不安を和らげるためには、資産の「貯め方」だけでなく「使い方」の設計も大切です。公的年金に加え、介護費用・医療費・住まいの修繕費・税金・相続対策など、幅広い支出を想定した「キャッシュフローの見通し」が重要となります。
また、国や自治体の補助制度(高額療養費制度、高額介護サービス費制度、住宅改修補助、成年後見制度など)を正しく理解し、必要なときに活用できる準備も欠かせません。
「何のための老後資金なのか」――お金があることと、安心して暮らせることは、必ずしもイコールではありません。今の暮らしを楽しみながら、将来への備えも怠らない。“バランスある老後設計”こそが、本当の「安心」につながるのかもしれません。
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