(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代を迎え、老後資金に関する不安は年々高まっています。特に60〜70代の高齢者世帯の中には、十分な貯蓄や年金収入があるにもかかわらず、「お金を使うことへの不安」が拭えず、思うように生活を楽しめない人も少なくありません。一方で、節約を美徳とする長年の習慣が裏目に出るケースもあり、「老後資金を貯めたのに、結局は満足に使えなかった」と後悔する声も聞かれます。

年金月25万円・貯金4,000万円だが「不安で使えない」

「夫婦ともに正社員で定年まで勤めたので、老後はなんとかなるだろうと思っていました。実際、年金だけでも月25万円はありますし、貯金も4,000万円ほどはあるんです。でも……なぜか心から安心できないんですよね」

 

そう語るのは、東京都在住の西川美佐子さん(仮名・67歳)。夫・和夫さん(仮名・69歳)と共に定年を迎え、現在は二人暮らし。子どもは独立し、郊外の戸建てに住み続けています。

 

「幸せな老後」のはずだった――そう思える状況にもかかわらず、美佐子さん夫妻は、日々の生活にどこか“ため息”をつくことが増えました。

 

「定年後に夫婦で旅行に行こうねって約束していたんです。でも、いざその時がくると“感染症の流行が心配”“物価が高騰しているし”“孫の進学資金も気になる”といって、結局どこにも行かずに3年経ちました」

 

家計簿の数字を見ては「今月は赤字だ」「外食は控えよう」と話し合う日々。節約が生活の一部となり、出費に対して“罪悪感”のような感情が出るようになったといいます。

 

「この前、夫がポツンと“もう少しだけ、贅沢してもよかったかもしれないね”って言ったんです。……そのとき初めて、私たちは何のためにお金を貯めたんだろう、と思ってしまって」

 

西川夫妻が老後資金を使うことに慎重になっているのには理由があります。ひとつは、「先の見えない医療・介護費用」への不安です。

 

厚生労働省によると、2022(令和4)年における我が国の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳であり、健康寿命とはそれぞれ約9年、約12年の差があります。つまり多くの人が、最晩年に「何らかの支援や介護を必要とする時期」を経験するということです。

 

要介護3以上になると、施設の利用料やヘルパー派遣料、福祉用具のレンタル費用などがかさみ、自己負担が月10万円以上になることもあります。「高額介護サービス費制度」により、自己負担額には所得に応じた上限が設けられていますが、一定以上の収入がある場合は補助の対象外になるケースもあり、貯金を取り崩す生活になる可能性も否定できません。

 

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