後から住み始めた住民に、廃業へ追い込まれるリスクも
工場・倉庫の立地を選ぶ際には、準工業地域であるか否かにかかわらず、住宅街の中にある物件はできるだけ避けたほうがよいでしょう。借り手となるテナントの業種が大きく限定されてしまうおそれがあるからです。
たとえば、自動車の整備工場や印刷・製本工場などのように、操業時に騒々しく機械音が鳴り響くような業種などは、近隣住民からクレームが起こる可能性が高く、最悪の場合には裁判で訴えられる危険性もあります。
万が一、訴訟となった場合、住民側が勝訴すれば、訴えられたテナントは工場の操業を停止せざるを得なくなるかもしれません。こうした工場と近隣住民とのトラブルを巡る過去の裁判例では、裁判所は、工場の権利よりも、住民の生活権のほうを強く重視する傾向があるからです。
しかも、先に工場があった場所に、後で隣にマンションができたようなケースでも、工場側が負けるおそれがあります。
実際、埼玉県川口市にはかつて、数多くの鋳物工場が存在し、そのために同市は"鋳物の街"として知られていました。
しかし、後から建てられたマンションの住民たちに「音がうるさい」「粉塵で健康を害した」などと次々に訴えられて、操業停止を強いられた結果、今では、工場はごくわずかしか残っていません。
このように、住宅街においては、事業者よりも、住民側のほうが圧倒的に強い立場に立つことになります。そのために、住宅街にある工場・倉庫は避けられてしまう傾向があるのです。
「柱の数と位置」が重要となる理由
工場・倉庫投資では、"アクティブ空間(どんな用途にでも活用できるスペース)"をどれだけ多く確保できるかが成功のカギを握ります。
そのような観点から、ぜひとも十分な注意を払っておきたいのが、"柱の数と位置"です。具体的には、柱の数は必要最小限で、なおかつ工場・倉庫をアクティブ空間としてフル活用するうえで、邪魔にならない場所にあることが望ましいといえます。
たとえば、工場の場合であれば、建物の中央に大きな柱があるとライン作業が難しくなります。また、倉庫を塾の教室として利用するケースがよくありますが、真ん中に柱があるような物件ではそうした転用も困難になるでしょう。
建築基準法など法令上の問題で、柱を建物の真ん中に置かざるを得ないこともありますが、そうしたやむを得ない事情がない限り、工場・倉庫を新築で建てる場合には柱を4隅以外には置かないようにすることをお勧めします。
また、中古の物件を購入する場合には、柱が邪魔な場所にないかどうかを十分にチェックするようにしましょう。