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全身の健康と歯の関係
男性81.09歳、女性87.14歳――これは厚生労働省「令和5年簡易生命表」で公表された日本人の平均寿命です。この半世紀ほどで男女とも約10年延びており、今や100歳を超える人も珍しくはありません。
しかしどんなに長生きできても、寝たきりになったり認知症になったりするなど、健康状態を損ねては、充実した人生をまっとうすることが難しくなります。つまり、健康である期間をどれだけ長く維持できるかが大きなカギとなります。
健康でいるためには適度な運動や十分な睡眠、ストレスを溜めないことなども大切ですが、なかでも私が重視しているのは食事です。私たちの体は食べ物によってつくられており、健康な体をつくるためには、偏りなく栄養を摂ることが欠かせません。そして、ためには食べ物をしっかり噛んで飲み込むための「歯」が正常に機能している必要があります。
近年よく耳にする「8020運動」も、80歳になっても20歯の歯を保って健康を維持しようという歯と健康に着目した取り組みです。私も歯科医師として、この運動の重要性を日々実感しています。歯は食べ物を咀嚼して消化しやすい状態にする役割を担っており、その数は永久歯がすべて生えそろうと親知らずを含めて32歯です。これをできるだけ失わず、しっかり噛める状態を保つことが非常に重要です。
国内外の研究で、歯の数と病気などによる死亡率の間には相関があるという研究結果が示されています。
イギリスで大学生約1万2,600人を対象に50年後の生死と死因を調べたところ、学生時代に歯を9本以上失っていた人は、それ以外の人よりも脳卒中や心筋梗塞に代表される循環器系疾患による死亡率が35%も高かったことが分かりました。
国内でも、福岡県の80歳の地域住民697人を5年半の間追跡した研究があります。この研究では歯の数と死亡率には明らかな関連があると報告されており、歯が健康状態に大きく影響することは歯科学界で広く認識されています。
普段の生活のなかで、むし歯が一本でもあると冷たい物がしみて痛み、食事がしにくくなることがあります。その結果、食欲が減り食べる量が少なくなったという経験は、誰しも一度はあると思います。ましてや歯がなくなれば満足に食事ができなくなり、体に必要な栄養が摂れなくなることは明らかです。歯の健康を保つことは、全身の健康を守り、質の高い生活を送るために欠かせない要素なのです。
噛める歯が少ないと要介護になりやすい
誰もができるだけ長く健康でありたいと願いますが、現実には要介護となりベッドの上で余生を過ごさざるを得ない人も少なくありません。厚生労働省の2023年のデータによると、要支援・要介護認定者の割合は70代後半で約1割、80代前半で約3割に上り、80代後半になると約6割に急増しています。
健康上の問題で日常生活が制限されることなく過ごせる期間を「健康寿命」といいます。日本は世界有数の長寿国として知られていますが、WHO(世界保健機関)の2023年のデータによると、健康寿命は男性が72.6歳、女性が75.5歳で、男女ともに平均寿命より約10年短いことが分かっています。
つまり亡くなるまでの10年間は、多くの人が健康問題で介護を必要とし自立が難しくなるのです。そうした事態を避けるためにも、できるだけ要介護状態にならないことが重要です。実は、歯の数や噛む力が要介護リスクに深く関わっていることが明らかになっています。
2012年、65歳以上の健康な男女約4,400人を4年間、追跡調査した結果、残っている歯が19歯以下の人は20歯以上の人と比較して約1.2倍も要介護認定を受けやすいことが分かりました。
さらに、咀嚼能力に問題がある人は、問題のない人に比べて約1.5倍も要介護認定を受けやすい傾向があることが明らかになっています。つまり歯が残っていることも重要ですが、その歯でしっかり噛めることも健康に大きな影響を与えているのです。
