(※写真はイメージです/PIXTA)

親が亡くなり、遺産や不動産などを相続する際に、相続人に認知症の人がいると事態が複雑になることが多いそうです。認知症を患うと判断能力が低下するので、遺産分割協議や相続放棄ができなくなり、ほかの相続人が困り果てるというケースも少なくありません。そうした相続のトラブルを避けるためには、親が元気なうちに相続対策を講じることが大切です。本記事では、奥田周年氏の著書『新版 親が認知症と思ったら できる できない 相続』(ビジネス教育出版社)より、認知症になる前にしておきたい相続対策のポイントを紹介します。

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認知症の相続人がいてもできる共有不動産の手続き 

認知症の相続人がいる場合、不動産は共有財産にできる

被相続人から不動産を相続した場合、相続人の一人が認知症を患っていたらどうでしょうか。相続財産を相続人で分けて相続するには相続人全員での遺産分割協議が必要です。しかし認知症の相続人は、判断能力が低下しているため、協議に参加することができません。

こうした場合、できることは主に2つあります。認知症の相続人の代わりに話し合いに出席する後見人を立てる。あるいは、あらかじめ民法で定められた法定相続分で共有財産とすることです。不動産の名義変更は、相続人代表者一人でも手続き可能なので、認知症の相続人がいても手続きが進められます。では不動産を共有財産にした場合、どんなことが起こりうるのでしょうか。
 

不動産を共有財産にすると扱いに不自由さが残る

認知症の相続人がいて後見人をつけず遺産分割を行う場合、相続遺産は法定相続分となります。ここで問題になるのは不動産です。法定相続分で分けると不動産は共有財産になります。ただし一般的には、共有となった不動産はトラブルの元となりやすいので避けたい形態です。

共有者の一人が認知症だった場合、本人の意思が確認できないため不動産を売却できません。不動産を売却したり、担保にしたりする場合は、共有者全員の合意が必要になるためです。そうなった場合は、やはり認知症の相続人に後見人を立てる必要が生じることになります。
 

認知症の相続人がいる場合は遺言書が役に立つ

共有状態になるのを防ぐために、被相続人が遺言書で、誰に何をどれだけ相続させるのかを書き残す方法があります。

ただし、被相続人の希望が、認知症の相続人に不動産を相続させることになると、登記申請は財産を引き継ぐ相続人が行う必要があるため、後見人が必要になります。または遺言執行者を決めておくことです。遺言書における財産の渡し方にも注意が必要になります。

 

『不動産の共有を避ける理由』

法定相続分による遺産分割では、預貯金だけでなく、不動産も法定相続分で分けられます。配偶者と子が2人だと、配偶者は2分の1、残りの2分の1を2人の子が分けることになります。そのため、ひとつの家を親が50%、長男、長女が25%ずつとなります。

共有財産の場合のデメリットの1つは、不動産全部を売却(処分)したいとき、共有者全員の同意が必要なことです。誰か一人が反対したら売却はできません。ただし、たとえば子の持分を第三者に売却することは可能です。

共有の建物を貸すこともできますが、原則として相続人全員の過半数の合意が必要です(全員の合意が必要なときもあります)。さらに、共有物件は、たとえば相続人の1人が亡くなった場合、その配偶者や子が相続する二次相続が起こると、問題が複雑化します。こうした問題を避けるには遺言書を残し、遺言執行者を指名。認知症の相続人以外の人に不動産を渡すなどの対応が必要になります。

 

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※本連載は、奥田周年氏の著書『新版 親が認知症と思ったら できる できない 相続』(ビジネス教育出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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