(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代とも呼ばれる現代。日本人の平均寿命が延びていることは非常に素晴らしいことですが、判断能力が低下する「認知症」を患う人も増えているのが実情です。認知症の人が1000万人を超えるともいわれる時代に、相続においてはどのような知見と対策が必要なのでしょうか。本記事では、奥田周年氏の著書『新版 親が認知症と思ったら できる できない 相続』(ビジネス教育出版社)より、認知症の人が周囲にいる場合に生じる相続関連で困るケースを紹介します。

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認知症の被相続人・相続人がいるとどうなる
相続した母が認知症では意思確認ができず自宅売却ができない!

高齢の相続人が自宅を相続した場合、一人での生活が心配だと、有料老人ホームへの入所を希望するケースは多いのです。しかし認知症が発覚した場合、自宅売却は簡単ではありません。高額の介護施設費用は、どう工面したらいいのでしょうか。
 

[マンガ3]相続人が認知症で自宅売却の意思確認ができない場合
 

判断能力が低下した場合、法律行為はできない

亡きご主人名義の自宅や土地を相続して暮らしていたお母さん。伴侶を失うと急に認知症が進むことが多いと言われます。例にもれず、この女性の場合、進行が速かったケースです。

近所に住む息子さんは自分の家族の暮らしもあるので忙しく、お母さんの認知症への対応が十分にできませんでした。さらに、実家の不動産売却ができないという難問に突き当たってしまいました。

この例のように、親の介護施設や老人ホームの入居一時金や費用を捻出するために親の自宅を売却しようと考える家族は少なくありません。そんなときに、親が認知症を患ってしまうと、大きな壁となってしまいます。

認知症は判断能力が低下した状態ですが、「判断能力」とは、自分の行いがどんな法律的な結果を生むかを判断する力のこと。判断能力が低下してしまった場合は、不動産の売買契約のように重要な契約の締結は行えないのが決まりです。もしなんとか売却できたとしても後日、売り主が認知症だったことが発覚して、契約が無効になるケースもあります。

 

不動産の売買には「意思確認」が必ず必要

実際、不動産売買では、売り主と買い主不動産仲介会社担当者、司法書士、そのほか金融機関担当者など数人の立会人がいる場合があります。このとき、売り主の身体的能力に問題がある場合、本人の意思があれば、委任状を準備したうえで、子どもが代理人となって売却の手続きを進めることができます。売主が病気で寝たきりでも、面談が行われ、意思確認を行い進めることが可能です。

一方、売り主が認知症の場合、あるいは面談をしたときに、その言動などから、「本人の意思がはっきり確認できない」と判断された場合は、本人の家族に後見人をつけるよう勧められることになります。

 

後見人がいれば、不動産が売却可能か

不動産会社の担当者に勧められた「後見人」は、本人の代理として本人の財産を守ったり、生活環境を整えたりする支援をしてくれる存在です。ただし後見人の役割は本人の利益になることを行うことであるため、本人名義の不動産を売ることを認めるかどうか不明です。本人に、入居一時金を払う財産がないなどの事実がわかれば、自宅を売却して入居一時金にあてたり、生活費や医療費として使ったりできるでしょう。そうでなければ、売却することに合意しないかもしれません。

一方、本人の居住用の不動産は、また本人が住むかもしれない場所であり、思い入れもあるかもしれないという面でも判断は難しく、最終的には家庭裁判所の判断にゆだねることになります。

もっとも後見人の選任はデメリットもあるので慎重な検討が必要です。

 

介護費用はいくらかかる?

介護施設の一例として、有料老人ホームを検討した場合、入居時に「入居一時金(前払い金)」を支払い、月々居住費や管理費、食費、光熱費などを合算した「月額費用」を支払います。入居一時金は0円から1億円など幅があり、0円の場合は月々の費用が高めに設定され、高額の場合は月額が無料だったり、安く設定されていたりします。ですので、入居するときは支払いのハードルが低くても、長期にわたって払い続けられるかを考える必要があります。
 

あああ
[図表4]介護にかかる費用出典:令和3年生命保険に関する全国実態調査


自宅で介護をする場合、住宅改造や介護用ベッドの購入などでかかる費用は、平均74万円となっています(出典:令和3年生命保険に関する全国実態調査)。月々の費用の平均値は、在宅の場合が4万8000円、施設の場合は12万2000円(同出典)と、施設のほうが2.5倍近く高い数値です。年間にすると在宅では、57万6000円、施設では146万4000円となります。

介護期間は4~10年未満が全体の31.5%で、平均5年1か月です。介護期間を5年間として計算してみると、5年間で在宅介護288万円、施設介護732万円となります。

万が一のときのこうした費用をどうするのか、理想は親が元気なうちに話し合っておくことです。しかし日々の忙しさや、万が一のことを話し合う機会を持てないまま介護に突入してしまうケースも少なくありません。もし介護費用を家族が立て替えた場合は、領収書をしっかり保存し、詳細を説明できるようにしておきましょう。遺産分割のときに債務控除として、相続財産の価額から差し引くことができます。


奥田 周年
行政書士
OAG税理士法人 社員税理士

 

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※本連載は、奥田周年氏の著書『新版 親が認知症と思ったら できる できない 相続』(ビジネス教育出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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