「まだ使えるから」と古いシステムを使い続けていたり、「リプレイスはコストがかかる」と先送りにしたり……。その「もったいない」という判断が、実は「2025年の崖」と呼ばれる深刻な経営リスクや、目に見えない「技術的負債」を積み上げる原因になっているかもしれません。本記事では、住田賢司氏の著書『STOP!迷走DX デキる上司のためのITリテラシー改革』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、多くの日本企業が抱えるレガシーシステムの問題点と、DX推進のために経営者が今すぐ取るべき判断について、ケーススタディと共に解説します。

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レガシー化した基幹システムの厄介さ

年季の入った基幹システムが存在している理由の一つは、安定したシステムは何年でも使えるので古くなっていることに気付けず、使い続けてしまうことです。

 

今でも工場の大きな機械を動かすのにWindows2000を使っている会社があります。Windows2000はマイクロソフト社もとうの昔にサポートを終了しており、一般家庭ではまず使われていない代物です。そんな旧式のOSではインターネットもまともに楽しめません。

 

ところが、昔からある工場などに調査に入ると、結構な頻度で見かけます。その会社の生産活動の根幹をつかさどる機械のスイッチがWindows2000なのです。「このパソコンが壊れたら、この会社は一巻の終わりなのでは……?」と考えると私は背筋がヒヤッとするのですが、当事者たちはまったく危機感がない様子です。もし壊れたら新しいパソコンを買ってつなげばいいと思っています。

 

しかし、話はそう単純ではありません。古いOSは現行のOSとはデータの保存形式が異なりますから、もはや取り出そうとすると目を剥くほど高額の費用がかかります。 「古いパソコンをインターネットに接続して、クラウドにデータをアップすれば抽出できるのでは?」と思うかもしれませんが、インターネットにつなぐこと自体が困難なのです。そんな厄介な仕事をやりたがるシステム開発会社は多くはないでしょう。

 

ちなみに、データを取り出せなくなった古いパソコンは大事に使うしかありません。そのため、パソコン内部にたまったほこりを掃除するサービスを提供している会社もあります。このDXの時代になんとアナクロな……と思わずにいられません。

なぜレガシー化してしまうのか

そもそもシステムはデジタルでできており、デジタルは生地のように擦り切れたり、生もののように腐ったりはしません。それなのに、なぜレガシー化してしまうのかというと、次のような理由からです。

 

古い技術を使っているからレガシー化するわけではなく、古い考え方に基づいた仕組みが今のニーズや環境に合わなくなっていることが本質的な課題です。つまり、どれだけ新しい技術を使っていても、属人的な構築や運用がなされていれば管理が難しくなり、ブラックボックス化します。システムを時代に合わせて柔軟にマネジメントできていないことこそが、レガシー化の本質なのです。

 

つまり、マネジメントの問題を解決しなければ、たとえ一時期の投資でシステムを立て直しても、遅かれ早かれレガシー問題が再発することになってしまいます。

見えないところで蓄積している「技術的負債」

レガシーシステムの中には、短期的な観点でシステムを開発し、結果として保守運用費が高額になっている例も多く存在します。これは長期的な観点をもって計画的な開発をしていれば、本来は必要のなかった保守運用費を払っていることになります。一種の負債ととらえることができるため、「技術的負債」(Technical Debt)と呼ばれています。

 

技術的負債を抱えているということは、将来にわたってDXの足かせとなり、本来はDXに費やすべき資金や人材を保守運用に取られることを意味します。そのように考えると、技術的負債は経営上の大きなリスクなのですが、これを認識している経営者は多くありません。

保守運用のコストがかさむならリプレイスも検討

【図表】

 

レガシーシステムや技術的負債の問題を断ち切るためには、リプレイスは最もシンプルな方法ですが、リプレイスすべきか否かはシステムごとの判断になります。

 

日々の小さな修正にも時間がかかるようになってくると、そのシステムは技術的負債が大きくなっている目安になります。使い続けるコストやリスクと、リプレイスするコストやリスクとを目に見えるリストなどにして比較し、どちらが自社にとって望ましいのかを考えていくといいでしょう。

 

ここで改めて設問の選択肢A~Cの是非を考えると、まず選択肢Aは今話してきたような理由から、とても危険な選択であることが分かると思います。できるだけ早急に技術的負債を解消するための手を打ったほうがいいです。

 

選択肢Bのように「今はリプレイスの予算がない」というケースは多いかもしれません。そうならないためには、システムの複雑化や老朽化を指摘されてからリプレイスを考えるのではなく、開発したときから将来のリプレイスを事業計画に組み込んで、予算やプロジェクトの体制を整えておくべきです。

 

選択肢Cの「今のシステムを長持ちさせたい」は、きちんとメンテナンスがされて技術的負債が解消できるのであれば最善の手段です。

年季の入ったシステムのリプレイスでありがちなトラブル

リプレイスをする際に気をつけたいこととして、いっこうに進まないケースがあることを話しておきます。

 

システム開発会社にリプレイスを依頼すると、「現状のシステムの調査と分析が必要です。それをしたうえでないと設計やプログラムができないので、まずは調べさせてください」と言われます。

 

調査や分析は確かに必要なプロセスなのですが、システム開発会社によっては時間を掛けて調査・分析したほうがお金がもらえると考えるため、発注者には「システムが複雑なので時間がかかります」「なにせ25年ものなので簡単には進みません」と言っておき、調査や分析をずるずると続けて、積極的には本質的解決を目指さないことがあります。 システム開発会社と工数(時間)で契約している場合に起こりやすい問題です。

 

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STOP!迷走DX デキる上司のためのITリテラシー改革

STOP!迷走DX デキる上司のためのITリテラシー改革

住田 賢司

幻冬舎メディアコンサルティング

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