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辞職の本当の理由は分からないまま
IT担当者が悩んでいるなら、それを解決してあげたいと面談の機会を設ける経営者や部門責任者もいることでしょう。しかし、残念ながらIT担当者から本音はまず聞けないと思ったほうがいいです。なぜなら、原因が経営者や部門責任者にあるからです。 仕事を丸投げする本人を目の前にして、「あなたから仕事を丸投げされて困っている」「命令するだけで具体的な指示がなく、どうしていいか分からない」などと言える人はあまりいません。よほど経営者や部門責任者との信頼関係があれば言えるかもしれませんが、そもそも信頼関係があれば辞職に至るほどの深刻なコミュニケーション・ロスは起こっていないはずです。
大抵の場合、辞職の理由は「人間関係のもつれ」や「自分には今の仕事は荷が重い」のような当たり障りのないものを挙げて、静かに去っていきます。辞めていく会社でわざわざ問題提起をして、経営者や部門責任者との関係を悪くしたい人はいないでしょう。
ここまで見てくると、選択肢Bのパターンだったところで同じことの繰り返しであることが予想されます。辞めていく相手が自社のIT担当から外注先のエンジニアに変わるだけです。
仕事を丸投げすると属人化しやすい
システム開発に限った話ではありませんが、仕事を部下に丸投げすると部下がその仕事の専属になってしまい、属人化を招きやすくなります。その部下しか「何が行われているか」を把握しておらず、その部下が辞めてしまうと引き継ぎが難しくなります。後任は前任者が何をしていたかを知るところから始めなくてはいけなくなるので、時間のロスが生まれます。
特にシステムの場合は、プログラムが属人化していることが“見えない”のでエンジニアでないと気付けません。
よくあるシステムの問題として、プログラムの複雑化があるのですが、前任が書いたプログラムで不要になった部分を消さないで、後任が新たなプログラムを書き込むということがあります。前任の書いたプログラムを不要と判断して削除したことが思わぬ不具合を産み出し、違う箇所でプログラムの修正が必要になるパターンもあれば、自分は一切責任を負いたくないので前任のプログラムはそのまま残して器用にプログラムを追記するというパターンもあります。そんなことを続けていると、不要かどうかすらも分からない謎のプログラムがどんどん増えていきます。後任になればなるほど複雑化したプログラムを読み解かなくてはならなくなるので、うんざりします。
IT担当しか知らない不都合を隠してしまえる
属人化することのもう一つの問題は、都合の悪いことを隠蔽してしまえることです。システムは通常どおり動いていれば、不具合が隠れていることに気付けません。そして、顕在化したときには取り返しのつかない事態になっていることが多いのです。
IT担当の引き継ぎの場面でも、前任者が「実はこういう不具合があるんだが、そこは見ないことにして」や「上司に説明しても分からないから、なかったことにしていいよ」というふうに後任者に言い、両者間で密約が交わされることもあるのです。そうすると、その会社のITはブラックボックス化してしまい、ますますIT担当のやりたい放題になってしまいます。
外注したくてもシステム開発会社に断られがち
属人化しブラックボックス化したシステムを抱える会社の場合、システム開発会社に頼んで解決しようとしても断られるケースがあります。「IT担当者が次々に辞めている」という事実だけで、「この会社は問題あり」というのがシステム開発会社には経験的に分かるので、リスク回避として断るのです。
断るときもシステム開発会社側は「費用面での折り合いがつかない」や「システムが複雑すぎて手を付けられない」といった理由を言います。 決して本当の理由「御社の丸投げ体質は危険ですよ」「エンジニアにとって御社の環境は地獄」とは言いません。自分たちがはずれくじを引かないように無難な理由で断って、波風立てずに静かにフェードアウトしていくというのが、おおよそのやり方です。
このように、IT担当者も本当の辞職理由を言わず、システム開発会社も何も言ってくれないので、経営者や部門責任者は自分の仕事の任せ方が悪いことに気付けないまま悪循環を続けてしまうのです。
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