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住宅業界の権力関係がつくる闇サイクル
担当者に重いノルマが課されるのは時代にそぐわない商習慣ばかりが理由ではありません。住宅業界の複雑な構造や流通形態も彼らを苦しめる一因になっています。住宅業界には、ハウスメーカー、工務店、設計事務所などのほか、不動産会社、建材メーカーなども含まれ、ピラミッド型のサプライチェーンを形成しています。
頂点にいるのは、テレビなどで大々的にCMを流している大手ハウスメーカーや大手不動産情報サイト運営会社などです。彼らはいうなれば“集客のプロ”たちで、自社の認知度や企業イメージを高めつつ、客を集めるために多額の広告宣伝費を使います。
著名なタレントを起用したり、全国規模で放映されるCMにしたりすれば、制作費と放映費だけで年間数億～数十億ものコストがかかるといわれています。その費用を埋めるためのノルマが現場の担当者たちに課せられるのです。
負荷はノルマだけにとどまりません。コストを抑えるために、設計士や施工現場の職人たちに無理な注文を押し付けることになります。
「この予算でどうにかならない？」「もっと安い材料に変えられない？」
こんなふうにしわ寄せは現場の職人や下請け業者に向けられ、当初の契約金額は少しずつ削られ、現場の職人たちはギリギリの条件で工事を進めることになります。コストカット、コストダウンの圧力が連鎖的に及ぶ構造が住宅業界の本質といっても過言ではないのです。広告に膨大な予算をかけた大手ハウスメーカーは、なるほど立派な展示場やパンフレット、企業イメージを前面に押し出したCMで客を惹きつけます。
しかし、その裏では現場の職人たちの予算を削るばかりでなく、施主が希望した素材やデザインの予算まで削減するようなことも珍しくありません。結局のところ、広告宣伝費をかけている会社ほど「コストカット」「効率化」という名のもとに、現場の質まで下げてしまうという悪循環を生むこともなくはないのです。
これで本当に施主のためになる家ができるかといえば、“NO”と言わざるを得ません。
コストバランスを図ろうとすること自体は理解できます。しかし、だからといって施主の知らないところでデザインや資材などの予算を削減するようなビジネスは健全とはいえません。担当者にも同じことがいえます。
「ノルマをこなすのは大変かもしれないけれど、会社のほうばかりを見るのではなく、施主を見なさい。人生でいちばん大きな買い物をしようとしている人が何を望んでいるのか、施主の言葉に耳を傾けなさい」と筆者はそう言いたいです。
家づくりはハウスメーカー、工務店、建築家のいずれかに依頼するわけですが、それぞれに得手不得手があり、どこに頼めば理想の家づくりが実現するかを見据える必要があります。どこに頼んでも不得手な分野があるのなら八方塞がりじゃないかと思う人もいるかもしれませんが、打開策はあります。
藤木 賀子
住宅コンサルタント
スタイルオブ東京株式会社代表
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