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お客さんの迷惑よりも、契約数を優先してしまう業界
1500万円も値引きしてもいいという話はさすがに筆者も引いてしまいましたが、住宅会社の営業担当者の怪しげなセールストークには枚挙にいとまがありません。
「今月中に契約していただけたら100万円値引きしますよ。太陽光発電もサービスしちゃいます」
こんな誘い文句は日常茶飯事です。1500万円とはいかないまでも、100万円の値引きは施主には魅力的に映ります。オプションで太陽光発電までついてくると聞けば、「早く決めたほうがいいかも」と思うのは自然です。しかし、この値引き額の提示も、施主にそう思わせるために用意していたシナリオかもしれないし、だとすれば最初から織り込み済みの金額だったことも多分に考えられるのです。
こうしたセールスが横行するのは、ひとえに、施主に契約を急がせるためです。以前、住宅販売の知り合いが口にした一言は、まさに住宅業界が抱えている問題を象徴していました。
「お客さんの迷惑よりも、契約数を優先する」
それは違うよ、と言い返したいところでしたが、知り合いが言い放った一言は、住宅業界の現実を如実に言い表してもいるのです。自分がいる業界の恥部をさらけ出すようでしのびないのですが、住宅業界にはこんな自分本位の担当者がいるのも、最初の提示額から大幅に価格を引き下げる“値引き商法”などの古い商習慣が残っているのも事実です。
現在のビジネスモデルに照らし合わせれば、明らかにおかしいと思えるような商習慣がいまだにまかり通っているのです。それはモラルの問題に通じます。
もちろん、すべての担当者にモラルがないとはいいません。誠実な想いで施主と向き合っている担当者もたくさんいます。しかし、たとえ一握りでも、施主の気持ちを顧みようともしない担当者がいれば、そんな担当者と施主との間に意思の疎通などあるはずもなく、信頼は損なわれ、施主が納得するような家づくりができるはずもありません。
では、なぜ彼らがそのような考えに陥ってしまうのか――? 背景には、業界全体が追い込まれた厳しい状況と、住宅業界そのものの複雑な構造、さらには業界全体にはびこる古い体質が起因しています。
少子高齢化が進んでいるせいで、新たに家を建てようという層も減少傾向にあります。それはそのまま新築着工棟数の減少につながります。加えて建築資材の高騰に業界全体が頭を悩ませています。それでも住宅会社は家を建てて売らなければなりません。それが“ノルマ”になって、担当者たちに重くのしかかってきます。
「あと〇棟契約しないと減給」「今月中にノルマを達成できないとボーナスカット」
こんなふうにペナルティをちらつかせてプレッシャーをかける住宅会社もあると聞きます。担当者が必死になるのも分かります。しかし、何が何でも売らなければと思う焦りが施主との意思のすれ違いや相互理解の不足を生じさせる原因になっているのです。
