(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期の安心な暮らしを求めて、高齢者住宅への入居を検討する家庭が増えています。バリアフリー設計や食事サービス、安否確認など、安心を支える設備が整う一方で、初期費用や月額費用は決して安くありません。特に親が持ち家を手放し、民間施設へ“引っ越す”となれば、その費用は数百万円単位に及ぶことも。高齢期の住み替えは、本当に“安心”につながるのでしょうか。

入居後に浮かび上がった“もう一つの現実”

「引っ越ししてから2ヵ月ほどは、母も『快適よ』と話していたんです。でも、徐々に孤独感が強まっていったようで…」

 

高齢者住宅には職員が常駐しており、緊急時の対応や日々の安否確認もありますが、常に話し相手がいるわけではありません。住民同士の関係性も希薄で、雅子さんは次第に「話し相手がいない」と感じるようになったのです。

 

「家事の負担が減って安心な環境にはなったけれど、逆に“人と関わる機会が減った”と。『前の家のほうが、近所の人と顔を合わせることができた』とも話していました」

 

結局、週に一度は奈緒さんが訪れるようになり、「安心のために選んだはずの施設」で、再び“付き添い”が必要な生活が戻ってきました。

 

高齢者向け住宅には大きく分けて、以下の3つがあります。

 

●サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

 …バリアフリー設計の賃貸住宅。安否確認や生活相談などのサービスがあるが、介護サービスは外部からの利用(訪問介護など)が前提。初期費用は賃貸住宅とほぼ同等。

 

●介護付き有料老人ホーム

 …介護サービスが常時提供される施設で、要介護者が対象。初期費用が数百万円以上かかるケースも。

 

●高齢者向け分譲マンション

 …自宅と同様に購入する形式。管理費や共益費、生活支援サービス料が別途かかる。

 

入居時の平均初期費用は、介護付き有料老人ホームでは400万円超のケースもあり、今回の250万円という数字は決して極端な例ではありません。

 

「引っ越せばすべて解決すると思っていた。でも、“安心”って、お金や設備だけで得られるものじゃないんですね」

 

そう話す奈緒さんは、今では母との連絡を欠かさず取るようになり、「一緒に過ごす時間」を以前より意識するようになったといいます。

 

高齢者住宅への住み替えは、設備やサービスの整った“場所”を得ることはできますが、孤独や不安をすべて取り除けるわけではありません。親子で“何を安心と感じるのか”を丁寧に話し合うことも、見過ごしてはならない要素かもしれません。

 

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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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