「年金だけで足りると思っていた」独居の母に起きた変化
「母はずっと『年金で何とかなる』って言っていたんです。正直、私もどこかでそう思っていました」
そう語るのは、都内在住の会社員・杉本絵里さん(仮名・52歳)。3年前に父が他界してから、母・文子さん(83歳)は地方の実家で一人暮らしを続けてきました。
年金は月に12万円。貯金は父の遺産も含め、800万円ほど。慎ましい生活をしていた母には、十分な老後資金だと信じて疑いませんでした。
しかし、昨年の秋、転倒による入院をきっかけに、状況は一変します。
「夜に母から電話があって、『立てなくなった』って。すぐに救急搬送されて、大腿骨を骨折していました」
2週間の入院後、リハビリ目的で老健(介護老人保健施設)に一時入所。退所後は実家に戻りましたが、歩行器が必要な状態で、介護認定は要介護2。日中はヘルパーを呼び、夜間は一人で過ごすという生活になりました。
「週3回の訪問介護に、週1回のデイサービス。最初のうちは介護保険があるから大丈夫、と思っていたんですが…実際には介護保険の“対象外”の出費がけっこう多くて」
自費のヘルパー延長費、医療・薬代、オムツや介護用品の購入、さらに光熱費も以前より増加。電気代は月1万円以上になることもありました。
絵里さんは、母の家計を見直し、毎月の支出を試算しました。すると、平均支出は月18万円程度。年金は12万円なので、毎月6万円の赤字です。
「800万円あった貯金が、1年で100万円以上減っていて、これが続くと…って計算したら、あと3年もたないって気づいて」
慌てて親子で今後の生活を見直し、遠方の実家を売却して、絵里さんの自宅近くのサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)への転居も検討しましたが、本人が「住み慣れた家を離れたくない」と拒否。
「じゃあ、私が通って支えるしかない。でも、仕事もあるし、今でも月に1~2万円の仕送りをしているのに…これ以上は正直、家計がもたないです」
