(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期の安心な暮らしを求めて、高齢者住宅への入居を検討する家庭が増えています。バリアフリー設計や食事サービス、安否確認など、安心を支える設備が整う一方で、初期費用や月額費用は決して安くありません。特に親が持ち家を手放し、民間施設へ“引っ越す”となれば、その費用は数百万円単位に及ぶことも。高齢期の住み替えは、本当に“安心”につながるのでしょうか。

「安心して暮らしてほしい」と願った娘の決断

「母の一人暮らしが心配で、何度も電話をかけては『転倒していないかな』と不安になる日々でした」

 

そう語るのは、東京都在住の会社員・田口奈緒さん(仮名・43歳)です。3年前に父を亡くし、母・雅子さん(仮名・75歳)は郊外の一戸建てで一人暮らしを続けていました。

 

築40年の家は段差も多く、冬は寒さがこたえる環境。「いつまでもこのままでは危ない」と感じた奈緒さんは、母と話し合い、高齢者向けの住宅施設に住み替えることを決断しました。

 

「本人も『そろそろ引っ越したほうがいいかも』と納得してくれて。私も“これで安心できる”と思っていたんです」

 

しかし、入居が決まってから、思わぬ現実が次々と押し寄せてきます。

 

入居を決めたのは、東京都内にある「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」でした。要介護認定は受けていない雅子さんにとっては、訪問介護など必要に応じてサービスが選べる点が魅力でした。

 

施設側から提示された初期費用の内訳は、以下のようなものでした。

 

●敷金:家賃2ヵ月分(計30万円)

●火災保険・保証料・事務手数料など:15万円

●引っ越し業者への依頼費用:25万円

●不用品の回収・家具の処分費:30万円

●家財の一部新調(ベッド・冷蔵庫・電子レンジなど):20万円

●当面の生活資金・家賃+食費半年分の準備:130万円

 

「試算すると、トータルで250万円を超えていました。まさか“入居前”にここまで費用がかかるとは…」

 

さらに、母名義の自宅を売却する手続きも想定より長引き、売却資金が入る前に支払いが必要となったため、奈緒さんが立て替えることに。想定外の出費に、家計へのプレッシャーも強まりました。

 

 \1月20日(火)ライブ配信/
調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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