(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の夫婦が直面する現実のひとつに、「介護を施設に任せるか、自宅に迎えるか」という選択があります。特に、要介護度が高くなればなるほど、在宅介護は肉体的・精神的に大きな負担を伴います。「やっぱり家で面倒をみたい」という思いは尊くても、それが日常生活に与える影響は決して小さくありません。「できる限り家で一緒に過ごしたい」――そう決意した家族が、その後、予期せぬ苦悩と向き合うケースも少なくないのです。

ふたたび、施設への入所を決断

半年後、正一さんは再び施設入所を決断。今回はショートステイではなく、長期入所です。

 

「ごめんな、また施設に戻すことになって…」

 

澄子さんはうっすらと笑って、「ありがとう」と答えたといいます。その言葉に、正一さんは救われたような気がしたと語ります。

 

厚生労働省によると、要介護3以上の高齢者の在宅介護率は年々減少しています。在宅介護を選ぶ家庭は多いものの、身体的・精神的負担が限界に達し、再び施設入所に至るケースが少なくないのです。

 

在宅介護を支える制度として、「訪問介護」「訪問看護」「デイサービス」などの介護保険サービスが整備されていますが、利用回数や時間には制限があり、家族による「無償ケア労働」に大きく依存しているのが現実です。また、夜間や緊急時の対応は難しく、介護者の高齢化も課題となっています。

 

「自宅で看る」ことは、愛情と覚悟に支えられた尊い選択です。しかし、それがすべての家庭にとって最善であるとは限りません。介護に正解はなく、「できる限りやったうえで、任せる勇気」もまた、大切な決断です。

 

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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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