介護施設の費用、「公的支援」でまかなえる範囲は?
父・勝彦さんが入居していたのは、民間の介護付き有料老人ホーム。都内で月額22万円というのは、むしろ“安め”の部類でした。内訳は以下のとおりです。
家賃:8万円
管理費:5万円
食費:4.5万円
介護サービス費(自己負担1割):4.5万円
合計:約22万円/月(※要介護2)
年金月14.6万円では約7万4,000円の赤字。この分を息子が仕送りし、足りない分は父の預貯金を切り崩す生活。
●特別養護老人ホーム(特養)の場合、所得・資産に応じた「補足給付」で食費・居住費の軽減措置がありますが、有料老人ホームなどの民間施設では対象外です。
●生活保護の受給者は一部の施設費が公費負担されることもありますが、要介護2程度では該当しにくく、“グレーゾーン”の家庭ほど支援が届きにくいのが実情です。
誠さんは言います。
「父は“自分の金で、自分の介護をまかなう”という意識が強かったんです。だから、息子の仕送りで施設に入っている状況が、きっと引っかかっていた」
「父さん、通帳見たって足りないもんは足りないでしょ」と冗談めかして言っても、勝彦さんは笑いませんでした。
「でも“まだ残ってる”って思いたかったんだ。そう思うだけで、夜眠れるから」
父が欲しかったのは、残高でも現金でもなく、「まだ自分でなんとかできる」という実感だったのかもしれません。
勝彦さんのように、「年金で足りていない」ことをわかっていながら、それでも「自分でなんとかしたい」と願う高齢者は少なくありません。“安心して任せられる施設”に入っても、金銭的な自立を失うことが、不安や焦燥につながる場合もあるのです。
お金の支援だけでなく、気持ちの共有や、安心の「見える化」も、これからの介護には必要なのかもしれません。
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