高額税金で「稼ぐほど損」の日本、富裕層優遇で「お金がお金を生む」米国。成功者の証〈アメリカン・ドリーム〉は“貧富の格差拡大”の象徴

高額税金で「稼ぐほど損」の日本、富裕層優遇で「お金がお金を生む」米国。成功者の証〈アメリカン・ドリーム〉は“貧富の格差拡大”の象徴
(※写真はイメージです/PIXTA)

高所得者ほど税率が高くなる累進課税が採用されている日本では、所得が上がるほど損をしている感覚に陥っている人もいるでしょう。一方、アメリカでは「お金がお金を生み出す」社会構造のため、富裕層がより豊かになる傾向があります。一代にして巨万の富を得る「アメリカン・ドリーム」という言葉もあるほどです。しかし、こうした富裕層を優遇する不十分な再分配政策が貧富の差を拡大させているのも、アメリカの実情といえます。本記事では、中林美恵子氏の著書『日本人が知っておくべきアメリカのこと』(辰巳出版)より、アメリカの税制の実態を紹介します。

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「格差」が「アメリカン・ドリーム」を生む?

基本的に人間は、「グリード」(欲張り)な面があります。その欲を満たすために、遮二無二に頑張って知恵を出し、挑戦をします。もちろん、挑戦した人のすべてが成功するわけではありません。大きな成功を遂げるのはほんの一握りの人たちで、彼らは巨万の富を得ることになります。

それが人々を刺激して、挑戦する人が増え、イノベーションが起き、新しい産業が生まれ、新しい雇用も生まれます。それが経済成長を促す一方で、「格差」を生み出します。つまり「格差」は、経済成長のエネルギーがもたらす副産物だともいえます。

さらに、アメリカでは、「移民」の存在が大きく、貧しい状態でアメリカに移民として来る彼らは、ハングリー精神をエネルギーに変えて挑戦します。たとえば、イーロン・マスク氏です。南アフリカからの留学生としてアメリカに移民し、一代で世界一の大金持ちになりました。彼は、「アメリカン・ドリーム」を見事に体現した人物です。

イーロン・マスク氏は、トランプ政権の大型減税法案に反対したことをきっかけに、トランプ大統領との不仲と対立は続いていますが、2024年の大統領選挙では、トランプ候補に巨額の資金提供を行っています。

「お金」が「お金」を生むアメリカでは「再分配」が不十分

一般に、経済成長のプロセスでは必ず「格差」は発生します。それをそのまま放置しておくと「格差」は開く一方になります。したがって、どこかの時点で「格差」を修正しなくてはなりません。これは政府の役割です。豊かな人から「税金」というかたちで吸い上げて、社会に還元するという政策が必要になります。これを「再分配政策」と呼びます。

アメリカの税制では、連邦所得税は累進課税となっており、富裕層には名目上37%の最高税率が課されています。ただし、各種控除や、キャピタルゲインなどの投資収益が労働所得に比べて低い税率で課税されることから、実効税率が相対的に低くなるケースも多く、その点について「富裕層から十分に税金を吸い上げていない」との批判が存在します。

有名な例として、投資家ウォーレン・バフェット氏が「自分の税率は秘書より低い」と述べたことがあり、こうした現象を象徴しています。

「お金」が「お金」を生み出すのです。アメリカでは、再投資をする人たちを優遇している結果、「格差」が拡大しているということです。再投資が活発になれば、企業は新しい技術などを開発し、さらなる経済成長につながっていきます。そのサイクルは否定できませんが、「再分配」政策が十分に行われていないことは問題です。

その結果、高い経済成長を達成できる対価であるかのように、一方で社会的な不安定さが生まれてくるのです。したがって、経済成長と再分配のバランスをとることが政策として求められます。

日本では、高額な税金ゆえに働く意欲がなくなり、潜在的な経済成長を達成できていない状況だといわれています。たとえば、日本のタクシーの運転手の方からこんな話を聞いたことがあります。自分たちは歩合制なので、働いて収入が増えても税金が増えるだけなので、あまり働かないほうがいいと言うのです。

日本は、アメリカに比べると貧富の差は大きくないかもしれませんが、働くインセンティブを削ぐような制度になっているために、経済成長やイノベーションで遅れをとってしまうのも自然なことかもしれません。

 

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※本連載は、中林美恵子氏の著書、『日本人が知っておくべきアメリカのこと』(辰巳出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

日本人が知っておくべきアメリカのこと

日本人が知っておくべきアメリカのこと

中林 美恵子

辰巳出版

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