物価上昇が〈実態よりも苦しく〉感じられる理由。日米のデータで示す“統計の妙”…「体感」指標にトランプ政権も熱視線

物価上昇が〈実態よりも苦しく〉感じられる理由。日米のデータで示す“統計の妙”…「体感」指標にトランプ政権も熱視線
(※写真はイメージです/PIXTA)

物価上昇のニュースを見聞きした際、「生活がまた苦しくなる」と反応する人は多いでしょう。物価が上がれば、家計を圧迫することにつながるため、消費者心理としては「統計データの数値よりも実際は苦しい」と感じる傾向にあります。そうした消費者が感じるギャップを数値として示すのが「体感」指標です。日米の異なる調査において、この「体感」指標に関する類似の結果が報告されています。本記事では、中林美恵子氏の著書『日本人が知っておくべきアメリカのこと』(辰巳出版)から、日本人の資産防衛においても参考になるアメリカ経済について解説します。

ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

富裕層の資産承継と相続税 富裕層の相続戦略シリーズ【国内編】

八ツ尾順一(著)+ゴールドオンライン(編集)

『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)

『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

拡大する財政赤字・旺盛な購買意欲

一般的に、財政赤字を補うために国債を発行しますが、その国債を民間が買い上げることになると、その分だけ民間の投資が減少します。つまり、財政赤字が民間の富や財力を吸収してしまうということになります。これを「クラウディングアウト」と呼び、経済活動にとっては好ましくないとされることがあります。

ただ、中央銀行がお金を印刷して、それで国債を買い上げるのであれば、話は多少違ってきます。これをもう少し正確に言うと、中央銀行が量的緩和政策として国債を買い上げる場合、結果的に市場に資金が供給され、景気刺激につながることもあるのです。

また、アメリカの場合は、対米貿易で膨大な黒字を出している国が、為替安定や外貨準備の目的でアメリカ国債に投資する場合が非常に多いので、話はさらに複雑になります。アメリカが財政赤字のために発行した国債を、貿易赤字相手国の外国が購入するという構図にしてしまっているわけです。アメリカの財政「赤字」の結果、外国からお金を「借りる」ことになっている傾向が強いのです。
 

[図表2]アメリカの個人消費支出


アメリカの貿易赤字の要因の一つは、旺盛な消費意欲にあり、個人消費は右肩上がりに伸びています(図表2)。人々の購買意欲は極めて高く、極論すれば、欲しいものは借金してでも買うという状況です。

たとえば住居一つをとっても、全館冷暖房完備で、夏も冬も冷暖房つけっぱなしの快適な暮らしが当たり前になっています。貯蓄と投資の関係でいえば、本来であれば、個人が銀行に預金し、そのお金を銀行が企業に貸し出して、企業が成長して経済が回っていくというのが望ましい姿だといわれています。

過去70年間のアメリカの平均個人貯蓄率を見ると、平均約8.4%ですが、2020年4月には、コロナ禍による給付金支給や外出制限で、過去最高の32%に達しました。しかしその後、2022年9月には2.4%まで低下しています。
 

[図表3]アメリカの個人所得・可処分所得・消費支出


要するに、アメリカ人は貯蓄以上に購買意欲が旺盛だということです。それは、消費者にとってはハッピーな状態だともいえますが、国レベルでみると、膨大な貿易赤字を生み出し、諸外国は膨大な貿易黒字を利用してアメリカ国債を買っているという状況になっていくのです。諸外国はアメリカ人の消費者の購買意欲に頼って安くて品質のいい商品の輸出を伸ばします。そして膨れ上がったアメリカの貿易赤字は、ついにはトランプ大統領の「相互関税」の誘因になってしまった可能性があるのです。


中林 美恵子
政治学者
早稲田大学教授
公益財団法人東京財団理事長

 

【12/18(木) 『モンゴル不動産セミナー』開催】

坪単価70万円は東南アジアの半額!! 都心で600万円台から購入可能な新築マンション

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

※本連載は、中林美恵子氏の著書、『日本人が知っておくべきアメリカのこと』(辰巳出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

日本人が知っておくべきアメリカのこと

日本人が知っておくべきアメリカのこと

中林 美恵子

辰巳出版

混迷する時代を生きる私たちが、アメリカをより深く知ることで、日本社会のあり方や日本人の資産を防衛することにもつながります。 トランプ再登場後のアメリカの向かう先とそこから見えてくる今後の日本とはーー。

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録