今さら聞けない、生命保険の節税効果
生命保険には、大きく分けて「掛け捨て型」と「貯蓄型」があります。貯蓄型は、積立型という言い方もします。掛け捨て型とは文字通りの意味で、保険期間が満了になったらお金は受け取れません。しかし貯蓄型の中には、お金が増えるタイプのものがあります。さらに、そこに節税効果も加わります。
お金が増えるタイプの生命保険は、増えた分に対して税金がかかるのですが、増えた分は「一時所得」という扱いになるのです。
税金の計算式は、「(増えた金額−50万円)×50%×その人ごとの税率」です。つまり利益が50万円(一時所得の特別控除額)までなら、お金が増えてもその分の税金はゼロということ。もし利益が50万円を超えても、超えた分の50%に対してしか税金がかかりません。これは、お給料にかかる税金の半分ほどの低い税率ということになります。
生命保険も、知らないと大損することがある
貯蓄型の生命保険の中で、人気があるのはドル建ての生命保険です。これには死亡した際の保障機能はほぼないのですが、その代わりに積立金が毎年ドルベースで4%以上の複利で増えます。
たとえば10年経てば100万円が約150万円になるということです。ドル建てですから為替が変わることで価値が目減りするリスクはありますが、それを補う魅力があるということでしょう。
ただ、短期間で解約する場合には、不利になることもあります。保険によって異なりますが、解約返戻金の効率が悪くなる(元本割れする)こともありますので、その点は留意しておきましょう。
なお、利益50万円までは税金ゼロです。これは一人ひとりに対して判定されるため、家族の複数人で入り方を工夫すると、節税効果がさらに高まります。
イメージをつかみやすいよう例を挙げましょう。たとえば総額で2000万円の生命保険を4人家族にかける場合の、2つの方法を比較します(分かりやすくするため、税制上の詳細な解説はあえて割愛します)。
(1)1回で保険に入るケース
500万円×4名=2000万円
5年後の満期のときに1.5倍の3000万円になっていた場合、1000万円を増やせたことになる。ただし、1000万円-200万円(50万円×4名)×50%で、400万円に税金がかかる。
100万円×4名= 400万円、400万円×5年=2000万円
400万円が5年後の満期のときに1.5倍の600万円になっていた場合、200万円を増やせたことになるが、200万円に対する税金は特別控除額内で0円。5年間かけて10年後にすべての満期が終わったら、200万円×5で、1000万円が非課税で増えたことになる。
平たく言えば「人数を増やし、分割加入で特別控除額を上手に利用すれば、節税効果も増える」ということですが、いかがでしょうか。
これはあくまで為替が安定している前提での一例ですが、ちょっとした知識の差で400万円を非課税にできることがお分かりいただけたかと思います。知っているのと知らないのとでは大違い、知らないと大損ですね。
なお保険会社はたくさんありますが、後者の(2)のような保険を扱っている会社は決して多くありません。2025年現在の情報ですが、メットライフ生命保険株式会社や三井住友海上プライマリー生命保険株式会社には、このタイプの保険がありますのでご参考までに。
このように節税情報はあなどれませんし、それが積み重なると大げさではなく、人生が変わるレベルで損をしてしまうこともあります。情報が洪水のように溢れる今の時代には、情報格差もつきもの。あなたにはぜひ、情報強者の側に回ってほしいと思います。
永江将典
公認会計士・税理士
