「お母さん、これ何?」突然届いた“銀行からの封筒”
「『定期預金の解約が完了しました』って書かれていて……正直、目を疑いました」
そう話すのは、都内在住の会社員・中山恵理子さん(仮名・48歳)。離れて暮らす母・久美さん(80歳)は、地方で一人暮らしを続けていました。
母の年金は月10万円あまり。質素ながら堅実な性格で、家計管理はきちんとしていたはずでした。ところが、数年前に父が亡くなって以降、金銭感覚が少しずつ変わっていったといいます。
「ちょっと前に電話したとき、『最近ネットで買い物してるの』と笑っていたんです。まさか、そのお金が“全財産”から出ていたなんて思いもしませんでした」
解約通知をきっかけに、恵理子さんが帰省して確認すると、母の通帳には大きな異変がありました。定期預金として300万円近くあった残高が、数ヵ月の間にすべて引き出されていたのです。
「数十万円ずつの出金が続いていて、最後のページには“残高0円”の記帳。『何に使ったの?』と聞いたら、母は『自分で決めたことだから』としか言いませんでした」
不審に思い、クレジット明細を確認すると、通販サイトや健康食品、占いアプリなどへの支払いが数十件。中には“高齢者向け投資セミナー”の受講料30万円もありました。
「母はだまされたわけじゃない、全部自分の意思だと言い張るんです。たぶん、寂しかったんだと思います」
専門家によれば、高齢者が孤独や不安を抱えたとき、「自分でお金を動かしている」という感覚が“心の支え”になることがあるといいます。
高齢者は、自分の意思を尊重されたいという思いが強いです。『勝手に使った』というより、『まだ自分は判断できる』という自立の証としてお金を使うことがあります。判断力の低下と紙一重なので、家族が早めに見守り体制を整えることが大切です。
