(※写真はイメージです/PIXTA)

円安傾向が続く為替市場において、自らの資産を円建てに偏らせることは得策とはいい切れません。そのため、投資家としてはドル建てなど資産の多様化を検討しつつ、持続的に利益を生み出す優良企業の株を見極めることが重要です。その意味でも長期的な視点で株主を運用する「オーナー型株式投資」の考えが非常に参考になります。本記事では、ファンドマネージャーの奥野一成氏が、オーナー型株式投資を実践するときに留意すべき6カ条の中から『「相場」よりも「企業の利益」』『相場観を持たない』『購買力を上げる』について解説します。

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購買力を上げる〜日本円元本確保至上主義からの脱却~

多くの日本人は、為替相場を語るとき円安を歓迎し、円高を恐れる傾向があります。この考え方は、かつての日本が輸出主導型経済だった時代の名残です。確かに、1960年代や70年代には為替水準による恩恵を受けた輸出企業が成長し、国内経済を活性化させる原動力となりました。

しかし、現代の日本経済はそのときと比べて様変わりしています。多くの日本企業は生産拠点を海外に移し、円安による収益押し上げ効果は限定的です。

一方で、日本は依然としてエネルギー、食料、原材料のほとんどを海外からの輸入に頼っています。この現実を踏まえると、円安は日本の輸出産業に従事する「労働者」にとっては一時的な雇用や賃金の安定につながるかもしれませんが、それ以外の「労働者」や今となっては2000兆円以上の個人金融資産を有する「資本家(オーナー)」としての日本人にとっては、円安は日本人から一様に「購買力」を奪う元凶です。

円安が進めば、ガソリン代、電気代、食料品など、生活必需品の価格が上昇します。これは全ての日本人にとって実質的な生活コストの増大を意味します。さらに資本家視点で見ると、円安は将来の資産形成に深刻な影響を及ぼします。

特に、米国株式や全世界株式(オルカン)を積み立てている投資家は、円安局面での新規投資が割高になることに直面します。たとえば、1ドル=120円のときには1万2000円で100ドル分の資産が買えたのに、1ドル=150円では1万5000円が必要です。同じ投資額でも購買力が低下し、「入金力」が削(そ)がれるのです。
 

目先の利益に囚われがちな投資家…「円信仰」は危険

それにもかかわらず、多くの投資家は短期的なPL(損益計算書)発想にとらわれ、円高局面での評価損を嘆きます。たしかに、円高になると保有しているS&P500インデックスやオルカンの評価額が下がることは避けられません。

しかし、長期的に積立投資を続ける人にとって、この「評価損」は、その人が有している待機資金としての「日本円」の購買力改善と比較すれば大した話ではありません。むしろ、円高は「今後の投資効率を劇的に高める絶好の買い場」なのです。

今後も長く投資を続けるなら、円高時には同じ円でより多くの海外資産を仕入れることができ、将来の資産形成に大きな差が生まれます。

日本人が円安を喜ぶ背景には、輸出主導型経済の成功体験に加え、円を基軸に考える「円信仰」が根強くあります。

しかし、世界の視点から見れば、円は日本国内でしか使えないローカル通貨です。長期的に円安が続けば、海外旅行、輸入品の購入、海外留学費用など、すべての海外関連支出が割高になり、「気づかぬうちに世界から取り残され貧しくなっていく日本人」が増えてしまいます。

BS発想に立てば、自らの資産を円建てに偏らせることは極めて危険です。資産の多様化は、自分の経済的未来を守るための基本戦略となります。

 

 

次ページ日本が再び後進国に転落する?

※本連載は、奥野一成氏の著書、『武器としての投資~AI時代を生き抜く資産とキャリアの築き方~』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

武器としての投資

武器としての投資

奥野 一成

KADOKAWA

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