(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化が進むなか、切実なのが“介護にかかるお金”です。公的介護保険があるから大丈夫と思われがちですが、実際には自己負担や生活費が重なり、年金収入だけではまかないきれないケースも多くあります。

「補足給付」は誰でも受けられるものではない

特養には、低所得者向けに「介護保険負担限度額認定制度(補足給付)」があります。所得や資産状況に応じて、食費・居住費が軽減される仕組みですが、適用には厳しい条件があります。

 

たとえば、

 

●預貯金が単身で1,000万円以下(夫婦世帯で2,000万円以下)

●年金などの所得が一定以下

●世帯分離していない場合は、同居家族の所得も考慮される

 

「母の場合、貯金が300万円ある時点で補足給付の対象外でした。制度があっても、実際に使える人は少ないんです」

 

この“資産の谷間”にあたる層は多く、「貯金が少しあるから制度を使えず、かといって支払いが続かない」という現実が全国で広がっています。

 

介護費用の見通しを立てるには、以下の3点がポイントです。

 

●施設費用の内訳を確認する

 

介護サービス費・居住費・食費・その他(医療・日用品)を分けて把握する。

 

●控除・減免制度の適用可否をチェックする

 

補足給付のほか、医療費控除や介護費用控除などを利用。

 

●資産と収支のシミュレーションを行う

 

年金額・貯金額・支出額をもとに、5年・10年先までの“残高推移”を可視化する。

 

「母の通帳を見て、初めて現実が見えた」と智也さん。

 

ファイナンシャルプランナーに相談した結果、介護費用を家族全体の家計に組み込み、相続時の資産計画と連動させる方針に変えたといいます。

 

面会の帰り際、智也さんは母の手を握りながら複雑な思いを抱きました。

 

「長生きしてくれてうれしい。でも、同時に“どう支えるか”の現実が重い。家族の幸せって、お金と切り離せないですね」

 

介護保険は確かに大きな支えですが、そのカバー範囲には限界があります。特養でも、年金だけでは赤字になる家庭は少なくありません。

 

重要なのは、「制度に頼る前提」ではなく「制度を使っても足りない前提」で備えることです。

 

親の介護は突然始まります。後悔しないために、

 

●早い段階で費用の試算をする

●家族間で分担を話し合う

●専門家や地域包括支援センターに相談する

 

こうした準備が、老後の生活と家族の関係を守る第一歩になるのかもしれません。

 

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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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