「これで安心できると思っていたのに…」
「やっと母を安心できる施設に入れたんです。でも、通帳を見たら残高がどんどん減っていて……正直、怖くなりました」
そう話すのは、会社員の佐々木智也さん(仮名・52歳)。要介護3の認定を受けた母・美代子さん(81歳)は、3か月前に特別養護老人ホーム(特養)へ入所しました。
智也さんは、これで母の生活が安定すると胸をなで下ろしていました。
「特養なら公的施設だから安い、って思っていたんです。だけど、母の年金が月13万円なのに、支出が18万円を超えていて……“毎月マイナス5万円”の現実を突きつけられました」
特養(特別養護老人ホーム)は、原則として介護保険サービスの自己負担が1割(所得により2〜3割)で利用できる公的施設です。一見すると安く思えますが、実際の費用は以下のように構成されます。
●介護サービス費(自己負担分)
●居住費(部屋代)
●食費
●医療費・薬代
●おむつや日用品の実費
平均的には、要介護3の入所者で月15万〜20万円程度。美代子さんの場合、介護サービス費や食費のほか、持病の通院費・嗜好品費が加算され、月18万円ほどかかっていました。
「母は糖尿病があって、食事療法も必要。別料金の“治療食”を頼んでいて、これも1食数百円高くなっているんです」
入所にあたり、母が老後のために貯めていた貯金は約300万円。しかし、月5万円の赤字が続けば、5年で全額が消える計算です。
「もし長生きしてくれたら、それは喜ばしい。でも、その分お金が尽きるスピードも早い。施設を転々とするのもかわいそうで……」
智也さんは毎月の不足分を補うため、自分の給料から仕送りを続けています。しかし、自身も高校生の子どもを抱え、教育費がかさむ時期。「このままだと共倒れになるかもしれない」と感じ始めたといいます。
