「住まいの確保」はセーフティネットの最前線
高齢者の家賃滞納や住宅不安に対しては、以下のような支援策が用意されています。
● 生活保護制度
賃貸住宅に住む場合、住宅扶助(上限あり)が支給され、家賃の全額または一部が公費でまかなわれる
高齢者単身世帯で資産や援助者がいなければ、年金だけで生活できない場合に受給対象となりうる
● 住居確保給付金(厚労省)
原則として「離職者・収入減少者」が対象(※高齢者でも対象になる場合あり)
一定期間、家賃相当額が自治体から大家に直接支給
● 高齢者向け住宅入居支援制度
NPOや自治体が仲介し、保証人がいなくても入居できる民間賃貸住宅の仕組み
しかし、これらの制度の存在や申請方法を高齢者が自力で調べるのは困難であり、「ギリギリまで我慢してから駆け込む」ケースが多いのが実態です。
生活保護の申請から2週間後、智子さんには生活扶助と住宅扶助の支給が決定しました。滞納していた家賃は制度の対象外でしたが、今後は家賃4万8,000円が自治体から直接支払われることになりました。
「なんとか退去にはならずに済みました。生活保護って、もっと特別な人が受けるものだと思っていたけど…今は、誰にでも起こりうる話なんだなって思います」
これまで“誰にも迷惑をかけずに生きてきた”と話す智子さん。その生き方を崩すには、3ヵ月分の家賃と、勇気が必要でした。
「困ったら早めに相談してほしいです。1人で考えても、どうにもならなかったから」
そう語る智子さんのもとには、地域包括支援センターの担当者が月に1度訪問することになりました。生活は決して楽ではないけれど、「今日食べるものがあって、誰かに話を聞いてもらえるだけで、ずいぶん違う」といいます。
住まいを失うことは、生活そのものを失うことと直結します。その一歩手前で声を上げることが、「支援につながる扉」を開く第一歩になるのかもしれません。
