60歳でリタイアするために、想定外のトラブルを乗り越えて
子どもたちの大学卒業で教育費負担がなくなった50代は、Aさん夫婦にとって「最後の貯め時」でした。ところが、リーマンショックや東日本大震災といった想定外の事態も。収入は一時的に減少しましたが、妻がパートを増やし、なんとか乗り切ったといいます。
「本当に妻との二人三脚。あと、投資を始めたのも大きかった。とんでもなく減った時期もありましたが、結果的にその後の資産増加のスピードは速かったですね。これがなければ、今ほどの余裕はなかったと思います」
明確な目標があったことで、10年間を有意義に使えたというAさん。55歳で役職定年になった後の5年はいっそう家庭優先に。急に仕事がなくなって「ロス状態」にならないよう、ゆっくりと生活を変化させていったといいます。
こうして、Aさんは予定通り60歳で退職。退職金や貯蓄を合わせた資産は3,200万円。年金についても、5年の繰上げ受給に踏み切りました。
年金の減額になっても「今」を選んだワケ
Aさんの年金は、65歳で受け取る場合は月17万5,000円ほどの見込みでした。これが、5年繰上げで約24%減額され、実際の受給額は月13万3,000円。一方妻も繰上げて、65歳受給ならば月9万5,000円だったものが、実際には月7万2,000円に。世帯での受給額は、月27万円だったものが、月20万円となり、約7万円の減額になりました。
「年間80万円も減るんですから、もちろん迷いはありました。でも、自由な時間が増える方が価値があると思ったんです。60代前半は体もよく動き、旅行も趣味も存分に楽しめる“黄金の5年間”ですからね」
その結果、現在68歳のAさんは、後悔を一切していないといいます。
「近所を散歩したり、妻と美術館に行ったり。何気ない時間がこんなに贅沢だとは思いませんでした。今の楽しみは『青春18きっぷ』を使った節約旅行(笑)。慎ましくも楽しく生きていますよ。資産運用も今のところ順調で、最低限の取り崩しで何とかなっている感じです」
そして、もし繰下げ受給をしていたら? という問いについては、こう答えます。
「もちろん5年、10年受給を繰下げていたら年金は増えます。でも明日死ぬかもわからない。生きていても、そのお金で楽しむ体力があるのか。そこが重要なんです。損得は結果論でしかわからない。自分が納得して決めるしかありません」
正解のない時代にどう生きるか
年金受給の開始年齢は原則65歳ですが、希望すれば最短60歳から受け取ることも、最長75歳まで繰り下げることもできます。
繰上げれば1か月につき0.4%減額、繰下げれば0.7%増額。数字だけを見ると繰下げの方が“得”に見えますが、その分「時間」という最大の資源を後回しにすることにもなります。
Aさんのように「今を生きたい」と感じる人もいれば、「将来に備えたい」と考える人もいて、どちらも間違いではありません。損得ではなく、生き方と価値観に沿った選択、そして早い段階からの準備をすることが、何よりも大切なのです。
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