「うちの親、認知症なんで」その一言に場が静まり返った
「何気なく言ったつもりだったんです。でも、職員さんの表情が一瞬止まって…『少しお話を整理しましょうか』と言われて」
そう語るのは、都内在住の会社員・田島弘樹さん(仮名・51歳)。要介護2の認定を受けた78歳の母の入居先を探しており、ある民間の介護付き有料老人ホームの見学に訪れていました。
母は軽度の認知症を患っており、日常生活は一部自立しているものの、物忘れや怒りっぽさ、夜間徘徊などが見られるようになっていたといいます。
「説明の途中で、つい口を滑らせて『うちの親、認知症なんで』って言ったんです。でも、それが施設側にとってはすごく重要な“申告”だったみたいで…」
職員が「認知症の程度を詳しく教えていただけますか?」と尋ねたことで、初めて田島さんは、施設によって“受け入れ可能な状態に差がある”ことを知ったといいます。
「徘徊はありますか?」「暴力や自傷は?」といった質問が続き、職員がかなり慎重に“見極め”ていることが伝わってきたそうです。
「『認知症なんで』の一言で、すごく場が重くなった気がして。こっちも悪気はなかったんですが、ちゃんと伝え方を考えなきゃいけなかったんだと反省しました」
認知症のある高齢者が入居できる施設は多数ありますが、すべての施設がすべての状態を受け入れられるわけではありません。
例えば、民間の介護付き有料老人ホームでは、中重度の認知症(特に暴言・暴力・徘徊などの症状が強い場合)を断られるケースもあります。一方で、認知症専門フロアや、ユニット型のグループホーム、特別養護老人ホーム(特養)などは、比較的受け入れ体制が整っています。
また、入居の際は「家族の説明」「医師の診断書」「ケアマネジャーの所見」などが重視され、本人の症状が“施設の運営に与える影響”まで配慮されることも多いため、言葉選びが重要になるのです。
