「仕送りを続けるより、一緒に暮らさないか?」
「もう毎月5万円もらうのも悪くてさ。家賃もったいないし、いっそ一緒に住もうか?」
そう言ったのは、80歳になる父でした。
都内で暮らす会社員・西山俊明さん(仮名・52歳)は、10年以上前から父に毎月5万円の仕送りを続けていました。父は地方で年金暮らし。生活は質素でしたが、古いアパートで1人暮らしをしており、「光熱費や病院代を払うと足りない」と言われたのがきっかけだったといいます。
「最初は月3万円だったんですが、段々増えていって……。まあ、自分の収入で出せる範囲だったので、仕方ないなと」
ところが最近になって、父から「もうアパートは引き払う」「俊明のところで暮らせばいい」と、突然の“同居宣言”が飛び出したのです。
「もちろん、父のことは嫌いじゃないです。でも正直、生活リズムも性格も合わないと思うんですよ」
西山さんは都内の1LDKに1人暮らし。再婚を考えて交際中のパートナーもおり、「ここに80歳の父が加わったら…」と想像すると、言葉を濁さざるを得なかったといいます。
「昔から“亭主関白”気質な人だったので、共同生活は難しいだろうなと。父には悪いけど、正直に『無理だと思う』と答えました」
父は少し不満そうにしたものの、仕送りは継続。しかし、「毎月5万円払っても、本人が“幸せ”と思えていないんじゃないか」と感じるようになったといいます。
西山さんはその後、父の住んでいる地域の高齢者支援センターに相談。「民間のサービス付き高齢者住宅」や「市の見守り支援制度」などの情報を得て、本人にも提案してみました。
「すると父が、『知らなかった』『もっと早く言ってくれればよかった』って。どうやら“仕送りを受ける以外の選択肢”を知らなかったようなんです」
市内には家賃5万円台で入居できるサービス付き高齢者住宅があり、食事付き・バリアフリー。本人も見学に行ったうえで、数ヵ月後に転居を決めたといいます。
