老後の住まいは「持ち家=安心」ではない
「持ち家=安心」と思われがちですが、マンションには固定資産税・管理費・修繕費などのコストが継続的に発生します。
特にタワーマンションはその傾向が強く、管理費が高額になることに加え、将来は住民の高齢化によって管理組合が機能不全に陥る懸念もあります。さらに、相続人が住まず空室が増えると、売却価格が下がり、資産価値の維持も難しくなるリスクがあります。
「売ろうにも、今の年齢では新たな住み替えローンも組めないし、賃貸で出すのもハードルが高いです。『この家を出たい』と思っても、そう簡単ではないですね」
困ったときに頼れる公的制度もありますが、支援には「条件」がつきものです。
たとえば、高齢者向けの医療費助成や介護サービスも、世帯所得や預貯金が一定以上あると対象外になる場合があります。また、マンションのように資産価値のある不動産を保有していると、生活保護などの制度の利用も難しくなります。
「『貯金があるから大丈夫』『家があるから安心』と思っていたことが、逆に制度の対象から外れる理由になってしまうとは思いませんでした」
老後に向けた生活設計は、“表面的なゆとり”だけでは不十分です。持ち家でもランニングコストがかかり、年金も十分とは言えない中、「突発的な支出」にどう備えるかが鍵になります。
沢田さんは今、「生活のダウンサイジング」を検討中です。
「旅行や趣味の支出を減らしたり、今のうちに住み替えを検討したり…。“老後はのんびり”と思っていましたが、“老後こそ戦略が必要”だと身に染みました」
年金や持ち家があるからといって、老後の生活が安泰とは限りません。医療費、介護費、住居費といった“想定外の出費”が重なれば、生活の安定は一瞬で揺らぎます。
「まさか自分たちが」と思う前に、いざという時の現金・制度・住まいの柔軟性を確保しておくことこそが、“ゆっくり過ごす老後”への第一歩なのかもしれません。
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