今回は、仮想通貨にとどまらない「ブロックチェーン技術」の応用範囲を見ていきます。※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『Jマネー FISCO 株・企業報 2016年秋冬号』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、ビットコインとブロックチェーンの基本のおさらいから、投資対象としてのビットコイン、さらにブロックチェーン技術の応用までを解説します(執筆:株式会社フィスコ所属アナリスト・田代昌之氏)。

あらゆる産業分野で「次世代プラットフォーム」に?

フィンテックの次の注目技術だと経産省も期待するブロックチェーンビットコインによって可用性の高さが証明されたブロックチェーンは今、ビットコインから独立する形でその応用の可能性が広く議論されており、さまざまな拡張アプリケーションが想定・試行されている。「ブロックチェーン2.0(またはビットコイン2.0とも)」と言われる潮流だ。

 

経済産業省もブロックチェーンに注目している。2016年4月28日に発表された資料「平成27年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料」には、ブロックチェーンは「〝フィンテックの次〟の注目技術」「あらゆる産業分野における次世代プラットフォームとなる可能性をもつ」という言葉が踊っている。

 

同資料にもあるが、ブロックチェーンの特徴をおさらいすると、

 

(1)記録手段として情報の改ざんが極めて困難であること

(2)ゼロダウンタイムを実現していること

(3)従来のシステム構築に比べて安価に構築可能であること

 

などに集約される。

 

 

こうした特徴をもったブロックチェーン技術を、ビットコインとは別のオープンシステムの基盤技術に応用したり(パブリック型ブロックチェーン)、社内や取引先同士などのクローズドなネットワーク内だけで使う「プライベート型ブロックチェーン」として応用したりすることによって、その可能性や適用範囲が今や大きく広がりつつある。

「企業内の処理コスト」を劇的に削減

その点について、ブロックチェーン技術を使った情報管理プラットフォーム「mijin(ミジン)」を提供するテックビューロ株式会社の朝山貴生氏は、『ブロックチェーンの衝撃』(日経BP社刊・共著)という本の中で次のように述べている。

 

「パブリック型のブロックチェーンでも、今後、トランザクションフィー(編注:取引手数料)などのコストが大幅に下がることは間違いないだろう。しかし、さらなる劇的な削減は、プライベート型のブロックチェーンによってもたらされるだろうと考えている。換言すると、前者が主に企業間の取引コストを劇的に削減するとすれば、後者は企業内やグループ内の処理コストとオペレーションコストを劇的に削減することになる」

 

朝山氏は、ブロックチェーン技術を使って金融機関の運営コストを2018年までに10分の1未満に削減するというミッションを公に掲げているが、「可能性としては100分の1未満への圧縮も夢ではないと考えている」とも述べている。

 

ブロックチェーンによって劇的に削減されるのは、情報システムそのものに関わる費用だけではなく、システムに携わる要員の人件費(金融機関にとっては情報システム費用と並ぶ膨大なコスト要因)までもがその対象に含まれることになるからだ。

 

先ほど取り上げた経産省の資料には、ブロックチェーン技術が影響を及ぼす可能性のある市場規模として、合計約67兆円という記載がある。内訳は、

 

(1)地域通貨・電子クーポン・ポイントサービスなどで約1兆円、

(2)土地登記・電子カルテ・住民登録などで約1兆円、

(3)デジタルコンテンツ・チケットサービス・C2Cオークションで約13兆円、

(4)小売り・貴金属管理・高額品の真贋認証などで約32兆円、

(5)遺言・IoT・電力サービスなどで約20兆円

 

となっている。もちろん、必ずしもこれら既存市場のすべてがブロックチェーンに置き換わるとは限らないが、政府も認めるブロックチェーンの潜在市場の高さは特筆すべきだろう。

 

Jマネー FISCO 株・企業報 2016年秋冬号

Jマネー FISCO 株・企業報 2016年秋冬号

株式会社フィスコ

実業之日本社

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