今回は、投資対象としての「ビットコイン」に関心が集まる理由を見ていきます。 ※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『Jマネー FISCO 株・企業報 2016年秋冬号』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、ビットコインとブロックチェーンの基本のおさらいから、投資対象としてのビットコイン、さらにブロックチェーン技術の応用までを解説します(執筆:株式会社フィスコ所属アナリスト・田代昌之氏)。

投資家を魅了する要因は「値動きの大きさ」

ビットコインは、手数料の安さやスピードなど送金面でのメリットが高い仮想通貨である一方、投資の側面も併せ持っていることは、連載第2回で説明したとおりだ。

 

ビットコインの時価を確認したければ、国内に複数ある取引所のホームページに行けば瞬時に確認できる。株式市場や為替市場などのように数兆円の売買が一日に行われているわけではないが、各サイトでは売りと買いのオーダーが並んでおり、1日や1週間、1カ月といった価格推移を見ることもできる。

 

 

ビットコインは誕生してからまだ数年しか経過しておらず、値動きを見るとマザーズやジャスダックなど新興市場に上場したばかりの銘柄のようなダイナミックな動き(値動きがかなり大きいこと)が見られる(下記図表参照)。こうした値動きに魅了された投資家も、続々とビットコインのマーケットに吸い寄せられているのだろう。

 

 

また、今年5月に可決・成立した改正資金決済法のなかで、証券会社と同じような分別保管制度や、金融庁が取引所を管理・監督すると正式に決まったことも信頼感を高めるきっかけとなった。いまだ不透明な税制問題をクリアすれば、ビットコインに興味を持つ投資家がより増えるかもしれない。

 

ここからは、ビットコインがどういった要因で上昇(下落)するのか、投資目線で紹介していく。株式や為替取引同様、ファンダメンタルズ、テクニカル、需給、ボラティリティの4項目で確認してみたい。

既存通貨への危機感が高まると仮想通貨の価値は上昇!?

ビットコインの価格形成の根幹とも言えるのがまさにこの要因だろう。ビットコインにおけるファンダメンタルズの変動要因の1つにあるのは「既存通貨への信任の度合い」だ。

 

この場合の通貨は、ドル、ユーロ、円などを指す。つまり、現在流通している通貨への信任が低下すればするほど、ビットコインの存在感は相対的に増していく可能性がある(連載第2回参照)。

 

実際、2010年代前半に欧州債務危機が発生した際、ギリシャ、キプロスでは預金封鎖及び、ネット上での資金移動の制限などを強いる混乱状況に陥った。このとき、一定の流動性を維持していたビットコインへの関心が高まり、価格が急騰する事態となった。

 

また、中国の存在も大きい。人民元に対する不安などが背景にあると考えられる。人民元の価値が低下すると、ビットコインの価値は上昇するケースが多い(以下図表参照)。

 

 

中国の中央銀行は、銀行を含む決済業者やその他企業によるビットコイン投資を禁止しているが、中国の個人投資家は依然ビットコイン市場のビッグプレイヤーの座にある。中国は2000年初頭から高い経済成長率を誇っていたが、足元では景気減速への懸念が高まっている。

 

2008年、リーマンショック後に実施した4兆元の経済対策が打ち出されて以降、過剰流動性による投資資金は、値上がりが期待される投資先に続々と流れこんだ。まずは、不動産に向かい、そして、理財商品へ。

 

昨年は株式市場に大量のマネーが流れこみ、2015年初頭に3500ptだった上海総合指数は、15年6月に5178.191ptまで急騰した。しかし、上海総合指数は高値をつけた2ヶ月後に3000ptを割り込むなど荒い値動きとなったのは記憶に新しい(チャート3参照)。

 

 

2015年8月の為替政策変更以後、人民元は下落トレンド基調を強めている。世界で流通している通貨では、ドルやユーロが圧倒的なシェアを握っているが、ビットコインの市場ではドル、ユーロよりも人民元の水準を確認しておく必要がある。

 

なお、日本ではビットコインの流通が、中国や欧米に比べるとさほど広がっていない。その要因として、日本の通貨である円に対する信任が高いことが挙げられる。日本国民の多くは、100年200年先はわからないにしても、自分が生きているうちに円の価値が毀損することは想定していないだろう。

 

自国通貨に対する危機感の差が、ビットコインへの関心の差なのかもしれない。

Jマネー FISCO 株・企業報 2016年秋冬号

Jマネー FISCO 株・企業報 2016年秋冬号

株式会社フィスコ

実業之日本社

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