コメ価格、再び「異常事態」へ…食卓を襲う「5kg4,000円超え」の新米シーズン到来【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

景気の予告信号灯としての身近なデータ(2025年9月24日)

コメ価格、再び「異常事態」へ…食卓を襲う「5kg4,000円超え」の新米シーズン到来【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
(※画像はイメージです/PIXTA)

8月の全国消費者物価指数の伸び率は9ヵ月ぶりに2%台へと鈍化し、統計上は「インフレのピークアウト」が示唆されています。しかし、食卓を取り巻く状況は、依然として改善していません。本稿では、内閣府が発表した9月の消費者マインド調査から、エコノミストの宅森昭吉氏が日本経済の現在地と今後の展望を分析します。

3月以降、DIは80台をウロウロ…依然「物価への不安」続く

25年9月の物価上昇判断DIは85.7と2ヵ月ぶりに上昇。3月以降7ヵ月連続で80台。

 

物価上昇判断DIは、調査開始から22年1月までは60台・70台で安定推移していました。しかし、ロシアがウクライナ侵攻した月の22年2月調査以降、物価上昇判断DIは80台・90台という高水準での推移が続いており、物価上昇の見方が強いことを示しています。

 

22年10月に90.4をつけたあと80台後半の高水準での推移が続き、23年は6月に90.7をつけました。そこから振幅をともないつつ24年9月の80.3までいったん低下しましたが、反転上昇傾向になり、25年2月に90.2と20ヵ月ぶりの90台を記録しました。

 

25年3月以降9月まで80台で推移しています。4月87.9から、5月87.0、6月85.8と2ヵ月連続低下しましたが、7月は87.4へと上昇、8月は84.8へ低下、9月は85.7へ上昇と最近は一進一退の動きになっています。

 

出所:内閣府「消費者マインドアンケート調査」
[図表1]物価上昇判断DI 出所:内閣府「消費者マインドアンケート調査」
※「上昇する」から「低下する」までの5段階の回答を景気ウォッチャーと同様にDIで作成した。

 

回答の内訳比率をみると、25年9月は「上昇する」が51.9%で、8月の50.0%から1.9ポイント上昇しました。4ヵ月連続の50%台です。4月・5月は60台でした。コメや鶏卵の価格が9月に入って8月から反転上昇したことも影響している可能性がありそうです。「やや上昇する」は38.9%で8月から3.5ポイント低下しました。

 

出所:内閣府
[図表2]消費者マインドアンケート調査(試行):物価見通し(1年後)の集計結果推移 出所:内閣府

 

※一番右の欄の数字は、上が景気ウォッチャー調査と同様に加重平均して求めたDI。

暮らし向きDIは5ヵ月ぶり低下…物価高が「生活の苦しさ」に直結

25年9月の暮らし向き判断DIは32.0へと5ヵ月ぶり低下。3月以降の30台は維持。

 

暮らし向き判断DIは、24年10月から25年9月までの1年間は、逆相関の動きをする物価上昇判断DIが84以上の高水準であったことから、低水準の20台・30台で推移しています。

 

25年5月は28.0で低水準ですが、25.4だった4月から2.6ポイント、3ヵ月ぶりの上昇になりました。6月30.4、7月33.6、8月は38.2と3ヵ月連続上昇で、24年12月の39.0以来の水準に。しかし、9月は32.0へと5ヵ月ぶりに低下しました。しかし、20台になることはなく3月以降の30台は維持しています。

 

出所:内閣府「消費者マインドアンケート調査」
[図表3]暮らし向き判断DI 出所:内閣府「消費者マインドアンケート調査」
※「良くなる」から「悪くなる」までの5段階の回答を景気ウォッチャー調査と同様にDIで作成した。

 

8月に暮らし向き判断改善も、9月に入り「揺り戻し」の形に

9月の物価見通し判断はやや上昇傾向に戻り、暮らし向き判断の改善傾向に水を差すかたちに。

 

暮らし向き判断DIと物価上昇判断DIの相関係数は16年9月から21年8月までの最初の5年間は0.01と無相関でした。しかし、21年9月から25年9月までの最近の4年1ヵ月間では▲0.676のマイナスで逆相関になっています。

 

24年10月から25年9月までの1年間は、物価上昇判断DIが84以上の高水準に上昇で、暮らし向き判断DIは20台・30台の低水準である状況には変わりはなく物価見通し判断が暮らし向き判断の足枷になる状況が継続しています。

 

25年8月では物価見通し判断は依然高めなもののやや鈍化傾向で、暮らし向き判断が改善傾向になりましたが、翌9月は揺り戻しの動きが出ました。

 

出所:内閣府
[図表4]消費者マインドアンケート調査(最近4年1ヵ月間) 出所:内閣府
※相関係数:▲0.6762

物価は7月比0.4%鈍化も、コーヒー豆は高騰止まらず

8月全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は+2.7%と「電気・ガス料金負担軽減支援事業」による押し下げ効果などで、7月から0.4ポイント鈍化。

 

8月の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は+2.7%と7月の+3.1%から鈍化し、48ヵ月連続上昇。9ヵ月ぶりに+2%台に鈍化しました。

 

エネルギー価格は支援策の影響で下落

8月のエネルギーの前年同月比は▲3.3%で、7月の▲0.3%から下落率が拡大しました。前年同月比寄与度差は▲0.24%の鈍化要因です。8月支払い分から夏場の「電気・ガス料金負担軽減支援事業」による押し下げ効果が出て、その寄与度が▲0.26%になりました。

 

8月の生鮮食品の前年同月比は+2.8%と7月の+3.3%から上昇率が鈍化し、前年同月比寄与度差は▲0.02%の鈍化要因です。

 

出所:総務省
[図表5]全国消費者物価指数・前年(同月)比 出所:総務省

 

8月の生鮮食品を除く食料の前年同月比は+8.0%で、7月の+8.3%から鈍化、前年同月比寄与度差は▲0.08%の下落要因になりました。5月に過去最大の前年同月比+101.7%をつけたあと鈍化している米類は8月では+69.7%に鈍化しています。

 

一方、生産国の天候不良によりコーヒー豆の高騰は止まりません。8月は+47.6%と7月の+44.4%から上昇しています。前年同月比は5ヵ月連続で高まっています。

 

出所:総務省
[図表6]全国消費者物価指数・前年同月比;コーヒー豆、米類 出所:総務省

 

8月の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合は、前年同月比で+2.7%と7月の+3.1%から0.4ポイント伸び率が鈍化したものの、48ヵ月連続で前年同月比上昇になりました。

 

8月の全国消費者物価指数・生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数は前年同月比+3.3%上昇で、+3.4%だった7月から伸び率が鈍化しましたが、41ヵ月連続での前年同月比上昇です。

 

実質賃金は7ヵ月ぶりプラス…2ヵ月連続プラスとなるか

実質賃金の算出に用いられる、8月の全国消費者物価指数・帰属家賃を除く総合は、前年同月比で+3.1%と7月の+3.6%から0.5ポイント伸び率が鈍化しました。実質賃金の前年同月比は7月速報値で+0.5%とボーナスが伸びたことで7ヵ月ぶりにプラスに転じました。

 

8月には物価面から7月に比べ0.5ポイント実質賃金の前年同月比の押し上げ要因になります。2ヵ月連続でプラスになれるか注目されます。

 

出所:総務省
[図表7]全国消費者物価指数・前年同月比 出所:総務省

新米の影響で、コメはピーク時に迫る高値に…卵も値上げに転じる

9月8日~14日のコメ5kgのスーパー平均販売価格が9週連続3,000円台のあと、2週連続4,000円台に。前年同期比は+37.3%。

 

全国のスーパーで9月8日~14日に販売されたコメ5kgの全POSデータ平均での販売価格が前週比+120円と2週連続上昇し、4,275円になりました。今年のピークの5月12日~18日4,285円に10円と迫る高水準です。新米が高値で出てきたことが影響しているようです。

 

9月に入って状況が変わったようです。8月25日~31日は3,891円と、9週連続で3,000円台。9月1日~7日は4,155円でした。前年同期比をみると+37.3%と、コメの値段が前年比ほぼ倍になっていたところからはかなり落ち着いていますが、依然高水準です。

 

出所:農水省
[図表8]スーパーでのコメの全平均販売価格(全POSデータ) 出所:農水省

 

9月のJA全農たまご・卸売価格東京M基準値は319円/kgで、8月の310円/kgから上昇。

 

25年8月のJA全農たまご・卸売価格東京M基準値は、1日~24日までの平均値は319円/kg。最近の極大値だった5月・6月の340円/kgをピークに、8月の310円/kgへと2ヵ月連続で低下しましたが、9月は再び上昇に転じています。なお、2月以降8ヵ月連続300円/kg台と高水準が続いています。

 

出所:JA全農たまご株式会社、総務省
[図表9]鶏卵価格の推移 出所:JA全農たまご株式会社、総務省
※2025年9月のJA全農たまご・卸売価格東京M基準値は、1日~24日までの平均値

 

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

 

 

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

 

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