「悲惨だよな」他人事だと思っていた厳しい老後
日曜日、テレビで「年金だけでは暮らしていけない」と嘆くシニアの特集を眺めていたときのこと。
「ああ、悲惨だよな……。でも、あれだけ節約してきたんだ。うちは大丈夫だよな。あと1年でゆっくりできるのが楽しみだよ」
何気ない問いかけでした。しかし妻はしばし黙り込んだ後、思い切ったようにこう告げたのです。
「うちも他人事じゃないのよ。これ、見て」
そうして差し出された通帳の残高は、100万円を切る金額。贅沢もせず、60歳時には退職金1,200万円も振り込まれたというのに、なぜこんなに少ないのか。長野さんは言葉を失いました。
事情はこうでした。結婚後、家計管理を任された妻は、実はお金のやりくりが得意ではありませんでした。子ども2人の教育費、マンションや車のローン、節約しきれない食費や生活費――。その結果、まったくお金を貯めることが出来なかったというのです。長野さんの涙ぐましい節約を見ていたはずですが、逆にこう責められました。
「だって、あなたの稼ぎが少ないのが根本的な原因でしょう? それにあなた、全部私にまかせっきりで。何にも相談に乗ってくれなかったじゃない」
退職金はどうしたのかといえば、「大金がある」という安心感と60歳を過ぎて年収が激減した分の穴埋めから、あっという間に100万円を切るところまで資金を減らしてしまったというのです。
「なんてことを…老後はどうするんだ」
