脳内で、人生設計がものすごい速度で書き換わり…
結局、彩さんの母親の強い希望で離婚したものの、自立のめどは立ちません。そのため、父親がこれまで通り母親が暮らす家の家賃を払い続け、生活資金を援助することで、まずは落ち着きました。
「戸籍上離婚しただけで、これまでと生活はまったく同じ。本当にバカみたいです。父に万一のことがあったらどうするのか。なにより、父の気が変わったらと思うと…。父は〈彩と遥に迷惑が掛からないように考えているから、大丈夫〉といっていますが…」
彩さんは、母親からの1本の電話を受けている間に「脳内で、今後の人生設計がものすごい速度で書き換わるのを感じた」といいます。
「正直、怖かったです。お付き合いしている相手がいるのですが、いすれ結婚…というビジョンが真っ先に砕けましたね。あとは、このマンションで2人暮らしていけるのか、もう1人分の生活費が発生すれば資産形成の計画が変わってしまうとか、いろいろ…」
「母はまだ60代ですが、働いた経験がないのですから、パート勤務も簡単ではないでしょう。結局父は〈独立しないもう1人の子ども〉を背負っているようなものだと思います」
社会全体をみると、離婚件数そのものは近年増加傾向にあります。たとえば、厚生労働省の『令和6年(2024年)の人口動態統計(概数・確定数未区別)』によると、離婚件数は 18万5,895組で、前年である令和5年(2023年)の18万3,814組から2,081組増加しています。
「親の老後を支えるのは当然」という考え方もありますが、「親のために自分の人生を犠牲にするのか、それとも自分を優先するのか」という問いは簡単に答えが出るものではありません。若い世代はもちろんですが、シニア世代も、自分自身の人生設計をしっかり行っておく必要があるといえます。
