「わかった。全部渡すから、君はもう自由に生きてくれ」
「もしもしパパ!?」
「どうした彩、久しぶ…」
「パパ、パパ! ママと離婚したって本当なの?」
「ええ……」
彩さんの勢いに飲まれていた父親ですが、彩さんの質問について、時系列で説明してくれました。離婚については、彩さんと妹が学生のころからたびたび言及されてきましたが、本当に面倒くさくなり、応じることにしたそうです。
「だから、パパはいったんだよ。〈貯金は全部渡すし、年金も分割する、それで自由に生きてくれ〉と…」
「ママは、パパと離婚したら私のマンションに来るっていうのよ!」
「やっぱり、そんなことだろうと思った…」
「私、どうしたらいいの…!?」
彩さんの実家は賃貸住宅です。長年父親が単身赴任だったことも理由ですが、父親は自分の実家を相続しており、定年退職後はそちらに移る計画でした。しかし、それを母親が「パパの親戚と付き合うのはイヤ」と、直前で拒否したのです。
「パパはさ、ママが子どもの人生のお荷物になると思ってずっと離婚しなかったんだよ。だけど、自分の人生を生きたい、自由になりたいっていうから、そんなにイヤなら離婚してやる、って、ケンカ別れになったんだよね…」
