(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代と言われるなか、50代はまだ“折り返し地点”ともいえます。仕事に一区切りをつけ、新たな挑戦に踏み出す人も少なくありません。しかし、長年積み上げたキャリアを手放すことには、大きなリスクも伴います。思い描いた「第二の人生」は、そう簡単には始まらないのが現実のようです。

50歳で自ら退職、「もう一度人生をやり直したい」

某食品メーカーに勤めていた原田さん(55歳・男性・仮名)は、50歳のときに退職を決意しました。新卒から約30年、勤め上げた会社を自らの意思で去ったのです。

 

「20代30代の頃は、がむしゃらに働いていました。営業成績を出すために朝から晩まで走り回って……。それなりに大きな会社だったので、社内政治も激しかったですが、『ここで生き残ってやる』という気持ちだけで突っ走っていました」

 

部長職となり、年収は1,000万円を超えていたといいます。仕事にはやりがいもあり、金銭面の不満もありませんでした。ただ、娘が大学を卒業して家を出た頃から、「このままで良いのだろうか」という思いが募っていきました。

 

「定年まで10年。続ける道もあった。でも、50歳を迎えた瞬間、急に“人生を変えたい”という気持ちに襲われたんです」

 

厚労省『賃金構造基本調査』(令和5年)によれば、部長職の平均賃金は59万6,000円(52.8歳)。課長・係長と比べても高い水準で、まさに“勝ち組”サラリーマンといえるポジションでした。

 

しかし原田さんは、退職を決意。家族への相談は一切なく、「辞めた」という事後報告だけでした。

 

「怒られましたよ、もちろん。娘からは『パパの人生だから、好きにすれば』とLINEが来たんですが……少し寂しくなりました」

 

とはいえ、本人は「新しい人生が始まった」と意気揚々。有給期間中にはビジネス書を読み漁り、筋トレを始め、「水を得た魚のようだった」と笑います。

 

しかし、有休が終わり“完全無職”となったある日、ふと気づきます。

 

「『何か新しいことを』と張り切っていたものの、その“何か”が自分でもよく分かっていなかったんです。」

 

「起業? でも、何の?」「飲食店? 料理はしたことがない」「前職と同じ業界? それじゃ辞めた意味がない」

 

手探りのまま、転職サイトを開く日々。表示される若者向け求人の数々に、急に現実味が湧き、思わず尻込みしてしまったといいます。

 

「そのとき思ったんです。“俺は、この中から仕事を選ぶのか?”って。若いころを思い出したくて“ワクワク”を求めていたのに、肝心のやりたいことが見つからない……」

 

そんななか、原田さんは「父が不動産営業をしていた」ことを思い出し、不動産業界への転職を試みます。履歴書を複数社に送りましたが、結果は全滅。

 

「“経験ないんですよね?”“年齢的に厳しい”って、面接でズバズバ言われました。やっぱり現実は甘くないですね」

 

 \1月20日(火)ライブ配信/
調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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