3. 外国信託の日本における税務上の取扱い
租税法固有の概念を除いては、租税法が用いる概念は、私法において用いられる意味と同一に解すべきという統一説が、判例・通説・実務的な考え方とされています。ただ、外国信託のような外国法の概念が日本の租税法上どのように扱われるかは、外国信託については直接正面から検討した判例はなく、学説レベルにおいても議論もされ尽くされていない状況です。
もっとも、デラウェア州法を設立準拠法とするLimited Partnershipの法人該当性が問題となった事案について、ある組織体が租税法の法人に該当するかは、我が国の課税権が及ぶ範囲を決する問題として、①当該組織体に係る設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、当該組織体が当該外国の法令において、日本法上の法人に相当する法的地位が付与されているかを検討し、これができない場合に②当該組織体の設立根拠法令の規定の内容や趣旨等から、当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かを検討して判断すべきとした最高裁判決(最判平成27年7月17日)等を考慮すると、外国法を準拠法とする外国信託においては、当該準拠法による信託の概念・仕組みは理解し考慮した上で、日本の信託法の概念をベースに租税法の適用を検討することが合理的であると考えられます。
外国信託の税務上の取扱いを正面から検討した判例は現時点で出ておらず、今後も外国信託については専門家としても明確な回答が出しにくい状況が継続するようにも思われます。
ただ、エステートプランニング及びファミリーガバナンスとしては、日本の現在の税制・判例を考慮して可能性のあるリスクを洗い出し、そのリスクヘッジをしつつも、ファミリーの希望をなるべく活かすプランニングが求められるものと考えています。
問題はそのリスクの洗い出しすらしないまま、あるいは不十分なままエステートプランニングを敢行してしまう専門家も少なくないということです。また逆にリスク回避のために外国信託を利用しないといった極端なアドバイスをされる専門家も少なからずいるということです。
外国信託を利用することが依頼者ファミリーにとって有用な事例はあります。ただ、そのためには、日本の専門家と外国信託を組成する側が緊密に連携して進めていくことが不可欠ということです。
酒井 ひとみ
シティユーワ法律事務所
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