(※写真はイメージです/PIXTA)

少子高齢化によって働き手不足が深刻化するなか、政策や企業の姿勢も「フルタイム就労による自立」を促す方向へと傾いています。こうした背景から、短時間勤務や不安定就労に対しては、今もなお“甘え”や“依存”といった視線が向けられることがあります。しかし、それぞれの生活環境や体調、家庭の事情を無視した「一律の自立観」が、かえって支援を遠ざけてしまうケースもあるのです。

制度が想定していない“グレーゾーン”

生活保護制度では、働いた分の収入は一部控除される仕組みがあります。たとえば、バイト収入が月6万円あった場合でも、全額が差し引かれるわけではなく、「基礎控除」「勤労控除」などを踏まえて算出されます。

 

「シングルマザーなら、児童扶養手当とか、いろいろもらえるでしょって言われるんですけど……実際は、生活保護を受けているとそのぶん保護費から引かれてしまうので、手元に残るお金はほとんど変わらないんです。もらっている実感はあまりありません」

 

生活保護世帯であっても、児童手当や児童扶養手当などの支援制度は受給対象となります。ただし、これらは「収入」とみなされるため、生活保護費から差し引かれるケースが一般的です。

 

「支援をいただいているのはありがたいと思っています。でも、実際の生活がそれで大きく楽になるわけではありません。“支援されてるんだから我慢すべき”という空気のほうが、正直つらいです」

 

自治体によっては医療費や住宅に関する支援制度も設けられていますが、生活保護にはすでに医療扶助・住宅扶助が含まれているため、個別の制度の恩恵を実感しにくいという声も少なくありません。

 

優子さんは今後について、こう語ります。

 

「もちろん、働けるなら働くべきだと思います。でも、私は“今はまだその時期じゃない”と感じています。いずれは在宅でできる仕事に挑戦したい気持ちもあるけれど、まずは娘をしっかり育てたい」

 

生活保護は「最後のセーフティネット」とされていますが、優子さんのように“一部就労”と“福祉的支援”の間にいる人にとって、そのあり方は決して単純ではありません。

 

厚生労働省は、生活保護受給者の自立支援のため、就労支援員の配置や職業訓練の実施などを進めています。また、地方自治体によっては、在宅でできる業務を紹介したり、メンタルヘルスサポートと連携した支援を行っている例もあります。

 

しかし、こうした支援策が「支援対象者に届いていない」「心身の状態が制度の前提と合わない」といった課題も根深く残っています。「甘え」や「自己責任」と切り捨てられがちな生活保護の利用ですが、その背景には複雑な事情が存在します。

 

支援制度があっても、心身の状態や家庭環境によっては十分に活用できないこともあります。こうした“制度と現実のズレ”をどう埋めていくのか。それこそが、いま私たち社会が向き合うべき課題なのかもしれません。

 

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