節税に有効な「小規模宅地の特例」は使えない?
亡くなった人が居住用として土地を利用していた場合、相続人の税負担に配慮するため、土地の評価額を大きく下げることができる「小規模宅地の特例」という制度があります。
たとえば、浩一さんが父親と同居しており、その相続期限までに継続して居住していた場合、その土地の評価額を8割減少させることができるのです。ただし、原則としてこの特例は同居していないと使えません。
例外として、同居していない場合でも特例が適用できるいわゆる「家なき子特例」も存在します。これは、亡くなった人に配偶者がいないことや、相続開始3年前に自己及び配偶者等の所有する家屋に居住したことがないなど、一定の要件に該当する場合に限り、居住用の土地評価を8割減らすことができるというものです。
ただし、今回の浩一さんの場合、親と同居しておらず、また地方の持ち家で暮らしていたことから、この特例は適用されませんでした。
浩一さんの「その後」
結局、浩一さんは相続税を支払う預金がなかったため「相続税の延納」という制度を利用し、相続税を分割納付することとしました。この制度は次の場合に利用することができます。
1.相続税額が10万円を超えること
2.金銭で納付することが困難であり、その納付を困難とする金額の範囲内であること
3.延納額及び利子税額に相当する担保を提供すること
4.相続税の納期限までに延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること
浩一さんは、相続税を支払うために相続した実家を売却し、売却益を相続税納付にあてることも考えました。しかし、父親の遺志を尊重したいと考え売却を断念。いずれは東京に戻りこの実家を守っていくと決意しました。
戸建てだけでなく、マンションの相続も要注意
近年は都内の土地が上昇していることもあり、相続の際に土地の評価額が予想外に高額になるケースがあります。
また、戸建てではなく居住用マンションを保有していた場合でも、マンション評価額の改正があったことから、令和6年以降の相続については以前よりもかなり高く評価されています。
両親が都内近郊などの自宅を所有している場合などは、生前に親子間などで相続について話し合い、相続発生後のトラブルを避けるようにしましょう。
宮路 幸人
宮路幸人税理士事務所
税理士/CFP
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