(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、子どもが家庭を持って独立した後も、親との「距離感」に悩むケースが増えています。とくに住宅購入など人生の大きな節目では、本人にとっては晴れやかな一歩でも、親にとっては「相談もないの?」とショックに感じることもあるようです。核家族化が進むなかで、家族間の“すれ違い”は思わぬ形で表面化することがあります。

「心配するのがバカらしくなった」…母がLINEをブロック

埼玉県に住む会社員の加藤英明さん(仮名・42歳)は、昨年念願の新築一戸建てを購入しました。結婚12年目、妻と小学生の子ども2人との4人暮らし。年収は750万円ほどで、マイホーム資金を長年貯めてきたといいます。

 

「コロナ禍以降、リモート勤務も増えて、手狭な賃貸では限界を感じていました。妻とも何度も話し合って、ようやく予算と希望の場所が一致する物件が見つかり、購入を決断しました」

 

しかし、引っ越しを機に予想外の“家族のひずみ”が表面化することになります。

 

「母には引っ越しの直前に電話で伝えました。あらかじめ言うと『それはやめた方がいい』と反対されそうだったから…」

 

英明さんの実家は東京・西部。車で1時間ほどの距離とはいえ、高齢の母にとっては「日帰りでは厳しい距離」と感じたようです。

 

「『あんたが好きに決めるのは構わないけど、だったらもう“うち”のことには口出さないで』と怒って、家族LINEからも抜けてしまったんです」

 

慌てて連絡をとろうとしましたが、「もう勝手にして」「心配するのがバカらしくなった」とLINEはブロックされ、電話にも出てもらえなくなったといいます。

 

「家族のことでここまでこじれるなんて思いませんでした。母にしてみれば、ひとこと相談があって然るべき、という気持ちだったのかもしれません。ですが、僕には僕の生活があって…」

 

英明さんは静かに語ります。

 

家族間の“情報共有”をめぐるトラブルは決して珍しくありません。とくに住宅購入や引っ越し、介護方針など、「人生の転機」に関わることは、親世代にとっては“自分も意見を言って当然”と考える傾向が強く、そこに温度差が生まれるのです。

 

一方で、法制度上は親族であっても、子の住宅購入に同意や許可は不要です。住宅ローン契約はあくまで本人の責任において行われるものであり、親が口を出せる権利はありません。

 

また、相続などの法的義務が関係する場合を除けば、「連絡の有無」は法律で定められているわけではなく、すべては“家族間の感情と価値観”に委ねられています。

 

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