富裕層に厳しい税制、資産把握の取り組み
出国税の対象は、株式や投資信託、未決済の信用取引・デリバティブ取引などで、現時点では不動産と暗号資産には適用されていません(2025年5月時点)。
しかし、「暗号通貨にも出国税を課すべきではないか」という議論は以前からあり、将来的には、暗号資産も納税対象になる可能性が高いとされています。そのため、今のうちに海外移住したいと考える暗号資産長者が増えているのです。
さらに、富裕層に対する資産把握の取り組みは強化される傾向にあります。例えば、「財産債務調書制度」では、一定以上の所得があり、総資産3億円以上(有価証券は1億円以上)や、所得にかかわらず、総資産10億円以上を保有する人は、その財産の状況を国へ報告する義務があります。
また、「国外財産調書制度」もあり、国外資産が5,000万円を超えると、これも税務署へ報告する提出があるのです。こうした情報をもとに、税務当局は今後さらに課税強化や報告義務を拡大することもあり得ると言われています。
さらに、令和5年度税制改正において、「ミニマムタックス」が創設され、令和7年(2025年)分の所得税から適用されています。
これは、極めて高額な所得を得ている一部の富裕層に対して、一定水準以上の税負担を確保することを目的とした制度です。
具体的には、各種所得の合計額から3.3億円を控除した残額に22.5%を乗じた金額が、通常の所得税額を上回る場合、その差額を追加で納める必要があるという仕組みです。対象となるのは、年間所得がおおむね30億円を超えるような超高額所得者とされています。
この措置は、いわゆる「1億円の壁」(所得が1億円を超えると、所得税の負担率が逆に低下する現象)の是正を一つの目的としています。こうした動きは、今は「ごく一部の超富裕層だけの話」だと思われるかもしれませんが、将来的に対象基準が段階的に引き下げられたり、別の形で課税強化が行われたりすることもあり得ます。そうなれば、当然、節税や資産防衛を目的として海外移住を検討する富裕層がますます増えることも考えられます。
こうした流れは、私が拠点とするドバイをはじめ、シンガポールやタイ、マレーシアなど、アジアの主要都市で活躍する日本人経営者や投資家と交流する中でも、年々活発になっていると肌で感じます。日本の将来性や税負担への懸念から、より有利な環境を求めて海外に活路を見出す人々の流れは、今後さらに加速していくかもしれません。
これは単に個人の選択の問題ではなく、国の長期的な活力や税収基盤にも影響を及ぼしかねない深刻な問題なのです。
宮脇 さき
個人投資家・富裕層向け海外移住コンサルタント
※本記事は『世界の新富裕層はなぜ「オルカン・S&P500」を買わないのか』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。記載内容は当時のものであり、また、投資の結果等に編集部は一切の責任を負いません。
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