離婚の際の財産分与
妻からの突然の離婚宣告に戸惑った茂雄さん。もし離婚となれば、避けて通れないのが財産分与です。
茂雄さんは知り合いの弁護士に問い合わせ、財産分与の内容について教えてもらいました。
財産分与の対象となる財産は、基本的に婚姻期間中に夫婦が築いた財産です。茂雄さんの場合は家や預貯金のほか、車や家電、家具などが当てはまります。そして、それらを半分に分けなければなりません。
つまり、茂雄さんが用意した老後資金である5,000万円の半額である2,500万円は藤子さんに渡さなければならないのです。家は売却して売却額を半分ずつにするか、茂雄さんが住みつづけるなら、藤子さんに評価額(約2,000万円)の半分を渡すかを考えなければなりません。
また、藤子さんは専業主婦のため、茂雄さんの年金の一部を受け取れます。これを年金分割といいます。具体的に受け取れる金額は、茂雄さんの老齢厚生年金(婚姻期間中)の2分の1で、計算してみると月額約9万円を受け取れることがわかりました。つまり、その分茂雄さんの受け取れる年金が少なくなるわけです。
こうした財産や年金の問題だけではありません。茂雄さんはこれまで家事のほとんどを藤子さんに任せきりでした。自分で生活を回す術がないのです。
さらに不安を募らせたのは、孤独な老後のイメージでした。夫婦で過ごすと信じていた日々が一変し、「一人ぼっちで生きていくのか」という現実が突きつけられたのです。
老後資金、年金、家事能力、そして孤独――。積み上げてきたはずの生活設計が音を立てて崩れ落ちるのを感じ、茂雄さんは深く頭を抱えました。
