息子から届いた1通のLINE…コンビニへ走った母
雅恵さん(81歳)は7年前に夫に先立たれ、地方の小さな町で静かに暮らしていました。子どもは息子の幸一さん(57歳)だけ。数年前に離婚し、今は勤務先の工場に通いやすいよう、電車で2時間ほど離れたところに住んでいます。
ある朝、朝食を終えた雅恵さんはお茶を片手にスマートフォンを何気なく開きました。すると、LINEに1通のメッセージが。幸一さんの名前です。
幸一さんからLINEが来ることは滅多にありません。珍しい……そう思って開いてみると、思わぬことが書かれていました。
「母さん、ごめん。部下が大きな失敗をしてしまって、俺が責任を取ってその穴埋めをしなきゃならなくなった。急ぎでお金が必要なんだけど、助けてくれないかな」
メッセージの内容を読んで胸のざわつきが抑えられなかった雅恵さん。息子の声が聞こえてくるようです。子どもの頃から「人様には迷惑をかけないように」といって育ててきたこともあり、これは余程なことだと感じずにはいられませんでした。
「どうしたらいいの?」と返信すると、すぐに返信がきました。
すると、まずはコンビニに行って電子マネーを5万円分買ってほしい。残りは振り込みになるけど、後で振込先を送るからとの返答。雅恵さんはすぐに外出の支度をして、財布を握りしめながらコンビニへ走りました。
間髪入れずに届くLINE、ATMの順番待ちで増していく焦り
しかし、電子マネーを買う方法が分かりません。「コンビニに着いたよ。電子マネーってどうやって買うの?」とメッセージのやりとりをしながら、なんとかギフトカードを発見。レジは学生アルバイトの若い店員で、カードの金額を確かめはしたものの淡々と会計が進みました。
「買ったよ、どうすればいいの?」とメッセージを送ると、今度は「コード番号を教えて」との回答。しかし、雅恵さんにはコード番号の意味が分かりません。LINEを打つのも一苦労だったため、LINEで電話をかけました。しかし、幸一さんは電話に出てくれません。
「今、立て込んでて電話ができないんだ。じゃあコード番号は後でもいい。45万円を今から送る口座宛に、コンビニのATMで振り込んでほしい。出来るだけ早く」
ATMの場所まで行くと、1人利用している人がおり、雅恵さんはその人の利用が終わるまで待つことに。利用時間が思いのほか長く、焦る気持ちがつのります。その間にも「ATMの前に行った?」とのメッセージが複数回送られてきました。
