国も注目する“空き家予備軍”としてのタワマン
田村さんは現在もタワマンに居住していますが、「体が動くうちに処分を考えたほうがいいかもしれない」と感じているそうです。
「管理組合の役員が持ち回りで回ってくるのも、60代、70代になってからだとしんどいですよね。施設の設備更新の議論も増えるし、“住む場所”というより“責任”のように感じてしまう瞬間があります」
国土交通省の報告書では、都市部の高層マンションの“空き家予備軍”化が懸念されています。とくに親世代が住んでいたタワーマンションを子世代が相続する場合、「居住ニーズのズレ」や「維持コストの重さ」から、数十年後には空き家や管理不全マンションになるリスクも指摘されています。
「タワマン=資産」というイメージは根強いですが、維持できる体力がなければ、その資産は“責任”や“負担”に変わる――田村さんのようなケースは、今後ますます増えていくかもしれません。
「子どもにこの家を継がせたいとは思いません。むしろ、身軽に生きてほしい」
そう語る田村さんの言葉には、所有から「活用・流動」へと価値観がシフトする時代の空気がにじんでいます。
「最初は良かった」と語るタワマン相続も、その先に見えたのは“自由”ではなく、“見えない制約”でした。家を持つこと、継ぐこと――その意味を、今こそ見直すタイミングなのかもしれません。
