1億円の資産を確保「自由になれる」はずが……
佐藤さん(仮名・54歳)は、大手企業に勤めるサラリーマン。管理職として働き、年収は1,000万円。独身で、脇目も振らず貯蓄と投資を続けた結果、資産はついに1億円を突破しました。
彼の昔からの夢は、仕事を辞めて自由に生きること。国内外を気ままに旅行したい。資格を取って違う分野の勉強をしてみたい。仕事に追われず、ゆっくり生きてみたい……。
年金受給までのブリッジ期間を考えても、十分に足りる資産を築いたはず。退職金は満額にはなりませんが、今辞めても1,000万円ほどは受け取れる見込みです。
ところが、いざ退職を考えると足が止まるといいます。
「資産の大半は株や投資信託。利確したら税金で減ってしまう。投資を続ければ暴落リスクはあるが、現金で持ってもインフレで将来的に実質価値が激減するかもしれない。病気になったら、長生きしたら? 本当に1億円で足りるのか……」
元々は、5,000万円を貯めたら運用益とゆるい労働で暮らす「サイドFIRE」を目指していた佐藤さん。40代で早々にその目標額は達成していました。
しかし、いざ5,000万円を貯めたら「これじゃ、やっぱり心配だ。もっと貯めてからにしよう」と躊躇し、結局1億円を貯めるところまで到達。にもかかわらず、まだ辞められずにいるのです。
それでも早期退職に踏み切れないワケ
佐藤さんにとって、会社員という立場はあまりにも心強いものでした。毎月決まった日に振り込まれる給与。社会保険や福利厚生。資産の増減に一喜一憂することなく、安定した収入がある安心感。
そうして佐藤さんは退職を先送り。念願だった「自由な暮らし」は夢のまま時が流れ、焦りが募る……。そんなスパイラルにはまり込んでいました。
「40代で仕事を辞めていたら、どんな人生だっただろうと思います。お金が足りなくなったら、また働けばよかったかもしれない。でも今ほどの収入は、もう得られないでしょう? 何が正解なのかわからなくなってしまって。こうやって、ただ年を取っていってどうするんだと思うのに、まだ踏ん切りがつかないんです」
