相続は「亡くなった後」の話ではない
相続というと「死後に発生する問題」というイメージがありますが、実際には生前の話し合いこそが最も重要なステップです。
多くの家庭で問題になるのは以下のようなケースです。
●遺言がなく、相続人間で分配が決まらない
●不動産の名義が親のまま
●親の意思が確認できず、介護費用や施設入居費をどう負担するか揉める
●親の死後、空き家が放置される
とくに不動産は分割が難しいため、トラブルの温床になりがちです。
2024年4月からは「相続登記の義務化」も開始され、放置された名義不動産への対応も厳しくなっています。つまり、「まだ早い」と思っている間に、制度上も状況が不利になる可能性があるのです。
とはいえ、「相続の話をする=死を願っている」と受け取られることもあるため、話し方やタイミングには十分な配慮が必要です。
専門家の間では、「相続」ではなく「これからの暮らし方」「介護や医療の希望」などの話題から入るのが望ましいとされています。
たとえば、
「もしものとき、どうしたいかを教えておいてほしい」
「介護や医療について、家族で考えておきたい」
「元気なうちに、家のことを整理しておかない?」
といった柔らかい切り口で対話を始めると、相手も身構えにくいでしょう。
山下さんは、現在も実家の管理と母の施設費の手続きに追われています。妹との関係も修復できておらず、「母が元気なうちに、話せることを話しておくべきだった」と痛感しているそうです。
「相続」は、財産だけでなく家族関係そのものに大きな影響を与える問題です。話し合いを避けたことによる代償は、想像以上に大きいかもしれません。
「その話はまだ早い」と言われたとしても、“その時”はいつ来るかわからない――だからこそ、話す勇気と、聞く覚悟が、家族の未来を守る第一歩になるのではないでしょうか。
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