●トランプ米大統領はクックFRB理事の解任を発表、クック氏はこれを違法としてトランプ氏を提訴へ。
●トランプ氏はFRB理事を政権寄りの人物で固め、地区連銀総裁人事にも影響力を強める狙いか。
●中銀の独立性確保は物価安定と持続的経済成長に不可欠、今後もトランプ政権の動向に注意。
トランプ米大統領はクックFRB理事の解任を発表、クック氏はこれを違法としてトランプ氏を提訴へ
トランプ米大統領は8月25日、自身のSNSで米連邦準備制度理事会(FRB)のクック理事を解任すると発表しました。解任の理由として、トランプ氏はクック氏が2021年に中西部ミシガン州と南部ジョージア州の住宅を購入するにあたり、投資用ではなく居住用として優遇ローンを組んだ疑惑を挙げ、過失だとしても「金融規制当局者としての能力と信頼性を疑問視させる」と批判しました。
クック氏は8月28日、トランプ氏による解任は違法だとして、ワシントンの連邦地方裁判所に提訴し、解任の即時差し止めを要求しました。この訴えを担当するのは、バイデン前大統領によって任命されたコブ判事で、同氏はトランプ政権による移民の強制送還に反対する判決を下したこともあります。なお、連邦地裁が理事の解任を差し止めた場合、トランプ政権側は控訴することができます。
トランプ氏はFRB理事を政権寄りの人物で固め、地区連銀総裁人事にも影響力を強める狙いか
今回、トランプ氏がクック理事の解任を発表した背景には、FRB理事を政権寄りの人物で固めるという狙いがあるように思われます。トランプ氏は、8月8日に辞任したクグラー理事の後任に、米大統領経済諮問委員会(CEA)のミラン委員長を指名しており、また、FRBのジェファーソン副議長についても、議長候補として政権側に取り込もうとする動きがみられます。
仮に、クック氏が解任となれば、やはり政権寄りの人物を指名する可能性が高く、また、ボウマン金融監督担当副議長とウォラー理事が第1次トランプ政権時に指名、承認されていることから、FRB理事7名のうち、過半数が政権寄りになることも想定されます(図表1)。なお、米ブルームバーグ通信の報道によると、トランプ政権はFRBの理事のみならず、FRBが統括する12の地区連銀の総裁人事にも影響力を強めようとしている模様です。
中銀の独立性確保は物価安定と持続的経済成長に不可欠、今後もトランプ政権の動向に注意
なお、米連邦公開市場委員会(FOMC)では、理事7名に加え、12の地区連銀のうち5名が投票権を持つ(常に投票権を持つニューヨーク連銀を除き輪番制)ため、理事の過半数が政権寄りでも、政策運営を動かすことはできません。地区連銀総裁は理事とは異なり、大統領の指名や上院の承認を受けずに選出されますが、5年に1度、理事が地区連銀総裁の任期更新の承認採決を行っており、次回は2026年2月に予定されています(図表2)。
理事の過半数が政権寄りの場合、政権の意向に沿わない地区連銀総裁は、任期の更新を承認しないというケースも考えられます。一般に、政府が景気浮揚のため、中央銀行に金融緩和を求めて政治的圧力をかけ続ければ、深刻なインフレと経済の混乱を招く恐れがあります。そのため、中央銀行の独立性確保は、物価の安定と持続的な経済成長に不可欠であり、引き続きFRBに対するトランプ政権の動向には十分な注意が必要です。
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『トランプ米大統領によるクックFRB理事の解任をめぐる動きについて【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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