●ウォーシュ氏は、2006年に史上最年少でFRB理事に就任、当時はタカ派とされ量的緩和を懸念。
●最近では、FRBの大幅なバランスシート縮小によりインフレが抑制され一段の利下げが可能と主張。
●同氏がハト派姿勢を明確にし議長に就任しても、FOMCの利下げバイアスが強まる恐れは小さい。
ウォーシュ氏は、2006年に史上最年少でFRB理事に就任、当時はタカ派とされ量的緩和を懸念
トランプ米大統領は1月30日、米連邦準備理事会(FRB)の次期議長にケビン・ウォーシュ氏を指名すると発表しました。ウォーシュ氏は、米ニューヨーク州生まれで、スタンフォード大学とハーバード法科大学院を卒業後、モルガン・スタンレーでの7年間の勤務を経て、2002年2月にジョージ・W・ブッシュ大統領の行政チームに加わりました。その後、2006年2月には史上最年少となる35歳でFRB理事に就任しました。
2008年9月の米証券大手リーマン・ブラザーズ破綻を機に発生した金融危機では、ウォール街の人脈を生かし、金融機関の救済などで重要な役割を果たしました。理事在職中の政策スタンスはタカ派とされ、バーナンキ議長(当時)が推し進めた大規模な量的緩和(QE)に懸念を強め、2011年3月に理事を辞任しました。ウォーシュ氏は現在、スタンフォード大学フーバー研究所の特別客員研究員および同大学経営大学院の講師を務めています。
最近では、FRBの大幅なバランスシート縮小によりインフレが抑制され一段の利下げが可能と主張
ウォーシュ氏は2025年11月の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で、米国経済は技術革新と経済政策によって強く成長しているが、FRBがその恩恵を阻害していると述べ、FRBを批判しました。寄稿では、FRBがなすべきこととして、①低成長・高インフレの予測を破棄すること、②肥大化したバランスシートを大幅に縮小すること、③米国の金融規制を緩和すること、④国際的な銀行規制から脱却することが挙げられました。
また、ウォーシュ氏は、インフレについて、過剰な賃金の上昇や消費の増加など、景気の過熱によって引き起こされるものではなく、政府の行き過ぎた支出や通貨供給によって生じるものであると述べています。そのため、特に③について、FRBが肥大化したバランスシートを大幅に縮小し、過剰な流動性を市場から吸収すれば、インフレが抑制され、さらなる利下げの余地を作り出すことができると主張しています。
同氏がハト派姿勢を明確にし議長に就任しても、FOMCの利下げバイアスが強まる恐れは小さい
市場では、ウォーシュ氏がバランスシートの縮小を主張していることから、他の候補者ほど金融緩和に積極的でないとの見方もあり、1月30日の米金融市場は株安、ドル高で反応、10年国債利回りも一時上昇する動きがみられました。ウォーシュ氏のFRB議長就任までのポイントを図表1にまとめましたが、改めて金融政策について上院でどのような見解を示すのかが注目されます。
なお、2026年のFOMCで投票権を持つ12名は図表2の通りです。仮に、ウォーシュ氏がハト派姿勢を明確にし、ミラン理事(1月任期満了)の後任を経てFRB議長に就任、パウエル議長が5月に任期満了で退任、新たなハト派の理事が就任となれば、ハト派は4名になります。それでもFOMC全体としては、依然バランスの取れた陣容と判断され、利下げバイアス(偏り)が強まる恐れは小さいとみています。
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『トランプ米大統領が次期FRB議長に指名したウォーシュ氏とは【三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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