(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者向けの住まいとして注目されている「介護付き有料老人ホーム」。介護体制が整っており、スタッフのサポートが受けられる安心感から、終の棲家として選ぶ人も少なくありません。しかし、年金収入だけで入居を決断した人のなかには、現実とのギャップに戸惑うケースもあります。「想像していたのと違った…」そう語るのは、78歳の男性・中村修一さん(仮名)です。

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「余裕がない」と感じる日々、そして後悔

入居から1年。現在、修一さんの生活は、年金のほとんどを施設の費用に充てることで成り立っています。娯楽や趣味にかけるお金はほぼゼロ。以前は好きだった将棋や温泉旅行も、今では“夢のまた夢”です。

 

「孫にお小遣いも渡せなくなった。娘からは“そんなに我慢してるなら出てくればいいじゃない”って言われましたが、今さらまた一人暮らしに戻るのも怖い。結局、逃げ場がないんですよ」

 

入居時の説明では「ほとんど年金で暮らせます」と言われていたものの、細かなオプション費用や生活の制約は、自分が“施設の管理の中で生きている”ということを日々痛感させます。

 

「高齢者施設に入れば、老後は安心。そんなイメージがありました。でも、それはお金に余裕がある人の話だったのかもしれません」

 

介護付き有料老人ホームは、介護サービスが組み込まれている民間施設で、介護保険サービスに加え、生活支援やレクリエーションなどのサービスを受けられます。一方で、月額費用は平均して15万円〜25万円程度と言われており、年金だけでまかなうのは難しいケースも少なくありません。

 

また、介護保険では一部のサービスしかカバーされず、生活支援費や日用品費、理美容代などは自己負担です。利用者本人が「自由に使えるお金」がどれだけ残るかを試算せずに入居を決めると、中村さんのような“誤算”に直面することになりかねません。

 

老後を「安心して暮らしたい」と思うのは誰もが抱く願いです。しかし、「どの施設に入るか」「どれだけ自由に暮らせるか」「金銭的な余裕はあるか」といった現実を、しっかり把握しておくことが大切です。

 

各自治体の地域包括支援センターでは、介護施設の情報提供や相談、見学の同行をしてくれる場合もあります。生活困窮者自立支援制度や、条件を満たせば利用できる特別養護老人ホーム(特養)の入居検討など、複数の選択肢を比較する姿勢も求められます。

 

介護施設に入ること自体はゴールではありません。「どんな暮らしをしたいか」「そのために何が必要か」を明確にし、自分の人生に合った終の棲家を選ぶことが、今後ますます重要になっていくでしょう。

 

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